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日本の海外での石炭火力発電事業、国内より大幅に汚染規制が緩い「二重基準」。ばいじんは40倍も緩い。若年死を最大41万人引き起こすリスク。環境NGOが報告(RIEF)

2019-08-21 12:31:23

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  環境NGOのグリーンピースは、日本政府の石炭火力発電所基準が、国内と海外で大きな格差があり、先進7カ国で唯一の、「二重基準(ダブルスタンダード)」になっている、と指摘する報告書を公表した。それによると、国際協力銀行(JBIC)等が資金支援する海外での石炭火力事業は日本の基準より、二酸化硫黄(SO2)が33倍、ばいじんが40倍も緩く、その結果、もたらされる若年死は今後の30年間で最大41万人に達する、と警告している。

 

 報告書は、グリーンピースが内外で公表した。まず、現時点で、石炭火力発電所の建設を内外で積極的に行っているのは、G7の中で、日本が唯一の国であると強調。さらに、JBICのほか、国際協力機構(JICA)、日本貿易保険(NEXI)等の公的金融機関を通じた海外の石炭火力事業への資金提供額は、G20の中で2番目に多い、と指摘している。

 

 石炭を燃やすと、SO2やばいじん、窒素酸化物(NOx)などの大気汚染物質が大量に排出される。人間がそれらを吸引することで、呼吸器疾患等を引き起こし、若年死の原因となることが知られている。しかし、報告書は 「日本が海外で展開する石炭火力事業のほとんどは、日本国内での規制よりもはるかに劣る排出制御技術を採用しており、 事実上、日本は致命的な二重基準を運用している」と指摘している。

 

分析の対象となった日本が海外で展開する石炭火力発電事業
分析の対象となった日本が海外で展開する石炭火力発電事業

 

 さらに「日本の金融機関は国内では受け入れられないレベルの大気汚染を引き起こす海外の石炭火力発電所に投融資している」と批判。グリーンピース独自の試算により、この「二重基準」によって、海外での発電所は、日本国内の発電所に比べて、NOxで最大13倍、SO2が33倍、ばいじんが40倍も排出されるとしている。受け入れ国の排出基準を適用すると、SO2量はWHOの基準を超える有害レベルとなり、約330万人が危険にさらされる。

 

 この試算は、2013年1月から2019年5月までに、日本の公的金融機関が資金提供した海外の17の石炭火力発電事業について、大気モデリングと、健康影響評価を使って実施した。対象発電所は、インドネシア、ベトナム、バングラデシュ、モロッコ、インドに建設されている。

 

 また報告書は、日本から資金提供を受けている海外のすべての石炭火力発電所に、日本国内の排出制限の中央値が適用されると、毎年推定で、5000人から1万5000人の若年死が回避される、と示した。そうならず、それらの発電所が、標準的運転期間の30年間の操業を続けると、対象とした17の石炭火力発電所がもたらす若年死は14万8000人から最大で41万人に達するという。若年死の内訳は年間、インドで5343人、インドネシアで2481人、ベトナムで1223人、バングラデシュで485人。

 

石炭火力発電所の近くで遊ぶ子供たち。インドネシア・ジャワ州中部のジェバラで。
石炭火力発電所の近くで遊ぶ子供たち。インドネシア・ジャワ州中部のジェバラで。

 

  グリーンピース・ジャパンのエネルギー担当、ハンナ・ハッコ氏は「残念ながら、高品質のインフラ『Quality Infrastructure』を輸出するという日本の約束と、低品質な石炭技術が輸出されている現実との間にギャップがみられる。日本は、人々の健康と地球環境を損なわないエネルギー技術に注力し、関係国とそれらの国の人々を尊重すべき。 日本は自然エネルギーの分野でリーダーシップを発揮できる可能性があるが、まずは大気汚染や気候変動を招く石炭技術の輸出をやめる必要がある」と指摘している。

 

グリーンピース・東南アジアのエネルギー担当、タタ・ムスタシャ氏は
「日本にとって良い技術でなければ、インドネシアにとっても良い技術とはいえない。 石炭火力発電事業受け入れ国の政府は、より厳しい排出基準を設定し、石炭からクリーンで再生可能な自然エネルギーにすみやかに移行して、国民を守らなければならない」と述べている。

https://www.greenpeace.org/japan/nature/story/2019/08/20/9932/

https://www.greenpeace.org/japan/nature/story/2019/08/20/9918/