HOME |積水化学 住宅用太陽光発電と蓄電池を町ぐるみで統合・制御する「仮想発電所(VPP)」の実証実験、茨城県つくば市で10月から開始。既存配電網を活用。19年の余剰電力買い取り制度終了後を睨む(RIEF) |

積水化学 住宅用太陽光発電と蓄電池を町ぐるみで統合・制御する「仮想発電所(VPP)」の実証実験、茨城県つくば市で10月から開始。既存配電網を活用。19年の余剰電力買い取り制度終了後を睨む(RIEF)

2016-09-07 14:01:01

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  積水化学工業が町単位で、太陽光発電と蓄電池を統合して仮想発電所(バーチャル・パワープラント:VPP)を構築する実証実験を、10月から茨城県つくば市で始める。VPPのネットワークには既存の配電網を使うことで、より信頼性が高くなるという。余剰電力買取制度の終了後を睨んで、電力を一方的に「売る」時代から、地域で効率的に「使う」時代への移行を目指す。

 

 実証実験は、茨城県つくば市で茨城セキスイハイムが分譲した「スマートハイムシティ研究学園」の20棟の住宅と、積水化学つくば事業所を対象とする。20棟の住宅は、大容量の太陽光発電、定置型大容量リチウムイオン蓄電池、ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)を装備したエネルギー自給自足型スマートハイムとなっている。

 

 これらの各住宅間と、電力使用状況が異なる積水化学つくば事業所を既存の東京電力の配電網を使ってネットワーク化し、EMS(エネルギー・マネジメント・システム)で統合・制御する。制御にはクラウドを利用するため、専用のサーバーなどは不要となる。

 

 各住宅に設置した太陽光発電の電力は、余剰分は蓄電されるが、それでも時間帯や天候、各家庭の使用状況によって発電電力の不足、余剰が生じる。このため、各住宅の蓄電池を連携させることで、太陽光発電の電力を効率的に活用するVPPを町単位で実現する。

 

 さらに、住宅の電力使用とは異なる地域の事業所もネットワーク化することで、住宅の蓄電池では貯めきれない余剰電力を事業所の需要に充当できる。「タウン・エネルギー・マネジメントシステム(TEMS)」の構築となる。

 

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   積水化学ではすでに同様のTEMS実験を北九州市の「北九州スマートコミュニティ創造事業」において検証している。ただ、北九州では各家庭の蓄電池のネットワーク化には独自に設置した自営線を使っている。今回は既存の配電網を使うことで、送配電の信頼性がより高くなるほか、ネットワークの発展性も容易になる。

 

 つくば市での実証実験は、まず10月に準備の整った10棟で開始し、2017年4月までに20棟全体に広げる。そして2018年9月まで検証を続ける予定。各住宅の蓄電池から配電網へ電力が流れる「逆潮流」の影響や、電力自給率の改善状況を検証する。また各住宅の太陽光発電の出力と蓄電池の容量に応じた料金体系も検討するという。

 

 太陽光などの再生可能エネルギーの発電電力を既存の電力網に流すのは、メガソーラーなどのような大容量の場合、周波数問題等を引き起こすことが知られている。家庭用の場合は売電分の容量が限られるが、蓄電池を活用すると容量が増加するので、同様の制御問題が生じる。このためTEMSでの統合管理が重要になってくる。

 

 太陽光発電電力の買い取り制度は、固定価格買い取り制度(FIT)がスタートする前の2009年11月からFIT開始まで、「余剰電力買い取り制度」が適用されていた。住宅用(10kW未満)の場合、買い取り期間は10年で、2019年には買い取り対象期間が終了する。このため発電電力をこれまでの売電から、どう有効活用するかが課題となってくる。

 

 積水化学では1999年に太陽光発電を標準搭載した住宅を発売し、これまでに17万棟以上の太陽光発電搭載住宅を販売している。このうち約7万棟が、2009年の余剰買い取り制度開始に合わせて売電を始めている。

 

http://www.sekisuiheim.com/info/press/20160830.html