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電力・ガス取引監視委 東京電力の電力小売企業 卸売り電力市場での「相場操縦」を認定。市場価格を不当につりあげ。30%の高値設定も。市場の自由取引を阻止(RIEF)

2016-11-21 14:57:34

TEPCOキャプチャ

 

  電力・ガス取引監視等委員会は、東京電力100%子会社である電力小売電気事業者の「東京電力エナジーパートナー」が卸売り電力市場で不当に高い価格で売り入札を行い、相場をつり上げていたとして、業務改善勧告を行なった。株式市場での「相場操縦」に当たる不当行為で、東電グループの市場軽視の姿勢を改めて露呈した。

 

 東電エナジーパートナーは、発電事業者から仕入れた電気を家庭、工場などの一般の需要家に販売する会社である。東電から需要家との契約約2,900万件を引き継いだため、日本最大の小売電気事業者として市場に影響力を持つ。

 

 監視委によると、同社は電力を調達する卸電力取引所の、翌日に受渡する電気の取引を行う一日前市場(スポット市場)において、平日の昼間の時間帯の受け渡しのためのコマ(スポット市場の一日を30分単位に区切ったものをいう)に対して、同社の限界費用から大きく乖離した「閾値(しきいち)」と呼ぶ高い価格での売り入札を行い、相場を人為的に操作していたという。

 

 このため監視委は、同社に対して①「閾値」を用いた売り入札価格の設定は今後行なわないこと②このことを社内において周知徹底するとともに、必要かつ適切な社内体制を整備する③②のためにとった具体的な措置について、今年12月16日までに委員会に報告することーーの3点を勧告した。

 

 ただ、株式などの相場操縦の場合、10年以下の懲役、3000万円以下の罰金、相場操縦行為で得た財産の没収などの刑事罰のほか、行政による業務停止命令などを受ける。しかし電気事業法の場合、監視委は勧告と、従わなかった場合に経済産業省に報告する権限しか与えられていない。

 

 通常、スポット市場では、コマ単位での取引を行う。具体的には、4月1日から8月31日までの間、同社は閾値をコマの売り入札の下限価格として設定した。しかし、同値は実際の限界費用から大きく乖離した高い価格。限界費用に基づく価格で売り入札した場合、対象期間のコマの約6割で、約定価格が下落していたはずとわかった。中には、約定価格が約3割下落するコマもあった。つまり東電は3割高い価格を人為的に設定していたことになる。

 

 監視委は、①東電エネジー社は、閾値を活用することで、スポット市場の約定価格をつり上げる可能性を「十分に認識していた」②限界費用を大きく上回る高値で売り入札は約定の機会を減少させ、経済的利益をも減少させることが明らかなのに、組織的に反復継続して価格操作をしていたことは、そこに「格別の意図」があったと考えられる③同社の小売料金の原価と同等の水準以上の価格となるように市場相場を人為的に操作することを目的としていたとみられるーーと述べ、市場相場に重大な影響をもたらす相場操縦に該当すると判断した。

 

 さらに、東電エナジー社のような大量に電源を確保する事業者が、こうした行為を行うと、新規参入の電力事業者らが、スポット市場から必要な供給力を適正な価格で調達して、小売市場で自由な事業活動を維持、展開することを阻害し、電気事業の健全な発達を害する、と厳しく指摘している。

 東電エネジー社は、業務改善勧告に対して、「当社としては、相場操縦の意図は一切なかったが、このたびの勧告内容に対しては適切に対応していく」とコメントしている。

http://www.meti.go.jp/press/2016/11/20161117006/20161117006.html

http://www.tepco.co.jp/ep/notice/pressrelease/2016/1337653_8661.html