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風力発電設備をカイトで空中に浮遊させ発電する「風力発電カイト」の実験成功。米グーグルの持ち株会社の子会社がノルウェー沖で実施。海底の深さに関係なく発電可能(RIEF)

2019-08-26 09:44:14

Makai2キャプチャ

 

 洋上風力発電は、海上より空中でーー。グーグルの持ち株会社Alphabet Inc.の子会社で新電力ベンチャーのMakani社は、洋上ブイに係留された「風力発電カイト」での発電実験に成功した。風力発電設備を洋上に浮かべたり固定するのではなく、カイトに乗せて空中で発電する仕組み。深海部でも低コストで効率的発電が可能という。

 

 (写真は、ブイにつないだロープで凧揚げのように空中浮遊する「風力発電カイト」)

 

 Makani社の実験は、ノルウェーの北海沖の約10kmの洋上で行われた。深さ220mの洋上に浮かべたブイの先500mの上空に、26mのカーボンファイバー製の翼を持ったカイト(M600)が浮き上がった。

 

飛行機ではありません。カイトです。
飛行機ではありません。カイトです。
カイトに乗せられた風力発電設備は一見すると、プロペラ飛行機のような形状。8基のローターを風力を受けて回転させ発電する。今回使った実験用のプロトタイプの設備の発電容量は600kWで、一般家庭300世帯分の電力をまかなえる。

 

 風力発電は1基当たりの発電量が大きいことから、洋上風力発電の巨大化が進展している。海底に固定する着床式の場合、発電機を設置するタワー設備は、巨大な高層ビルのようなコンクリートと鋼鉄で建設される。浮体式の場合も、巨大なブイのような設備が必要だ。

 

 これに対して、カイト式は、浮体ブイを活用するが、風力発電設備を空中に凧のように浮かせるため、従来の風力発電に比べて、鉄鋼、コンクリートの使用量が少なくて済む。空中での風の捕捉等はGPSやコンピューター制御で自動化される。コスト削減と、海底が深い海洋上でも発電できるメリットがある。

 

カイトを乗せたブイを係留する
カイトを乗せたブイを係留する

 

 実験は8月15日に実施された。エネルギーメジャーのロイヤルダッチシェルもパートナーとして協力した。Makani社のCEO、Fort Felker氏は「テストは成功した。大きな一歩を踏み出した。今後はシステムの商業化に向けて対応していく」と述べている。2020年夏には、さらに長期間、多様な気候条件での実験を重ねる予定という。

 

 地球を流れる風力の発電ポテンシャルは、世界全体の電力需要の100倍をまかなえる潜在力があるとされる。しかし、実際に使われているのはそのうち4%だけ。海底の深さ等が大きな課題だ。欧州の北海沿岸では海底が浅いため、着床式の風車が大量に設置されている。だが、日本の近海等では深度が深いため、浮体式洋上風力の開発が有力視されている。

 

 ただ、浮体式の場合も、巨大な浮体式設備が必要になる。海が荒れた日にも倒壊しないような規模と耐久性等を確保するコスト面がネックとされる。

 

Makai6キャプチャ

 

 これに対して、Makaniのエネルギーカイト・システムは、航空工学、素材化学、輸送や設置が容易な軽量デザインの自動コントロールの組み合わせだ。2008年の最初のカイトは、発電量2kWの帆布製。2010年に5.5mの翼で10kWの発電容量に拡大、今回のプロトタイプは2014年に開発した。

 

  Makani社は今後、商業化に向け、発電機のさらなる大型化を目指す考えだ。BNEFなどの予測では、大規模空中風力発電の開発には、まだ5~10年先まで時間がかかるという。ただ、今回実証実験に成功した規模での開発なら1~3年で実用化に持ち込めそうという。その場合、電源が乏しい島嶼部などの発電設備として活用できる期待がある。

https://makanipower.com/