HOME |商船三井と東北電力、石炭火力発電所用の燃料石炭運搬船に、風力エネルギー活用の「硬翼帆風力推進装置(ウィンドチャレンジャー)」搭載で共同開発へ。さて、「グリーンか、ブラウンか(?)」(RIEF) |

商船三井と東北電力、石炭火力発電所用の燃料石炭運搬船に、風力エネルギー活用の「硬翼帆風力推進装置(ウィンドチャレンジャー)」搭載で共同開発へ。さて、「グリーンか、ブラウンか(?)」(RIEF)

2019-10-25 16:26:10

shousennmitusi1キャプチャ

 

 商船三井は東北電力と共同で、風力エネルギーを動力とする硬翼帆式風力推進装置(ウィンドチャレンジャー)を、東北電力が運営する石炭火力発電所用の燃料石炭船に搭載するための協力関係を結んだ。2022年度以降に運航開始を目指すとしている。ウィンドチャンレジャーはCO2排出量削減に効果があるが、CO2排出量の多い石炭火力事業を前提とした活用は「グリーン」か「ブラウン」か。

 

 ウィンドチャレンジャーは商船三井が大島造船所(長崎市西海市)と共同で開発した風力推進装置。甲板に上下に伸縮可能な硬翼帆を立て、運航中に受ける風力を動力の一部にする仕組み。硬翼帆は1~8本の間で複数設置可能で、翼が4本の場合、燃費効率の改善度は通常の船に比べて3割になるという。https://rief-jp.org/ct4/94590

 

東北電力原町発電所の港湾に接岸した「ウィンドチャレンジャー」搭載船の予想図
東北電力原町発電所の港湾に接岸した「ウィンドチャレンジャー」搭載船の予想図

 

 商船三井と東北電力はこれまでも、石炭運搬船への同技術の応用を共同で検討してきた。その結果、東北電力が福島県南相馬市に所有する原町火力発電所の港湾施設に、ウィンドチャレンジャー搭載船の接岸が可能であることを確認。本格的に石炭燃料船への搭載を検討することとしたという。

 

 原町発電所は発電出力100万kWの超々臨界圧石炭火力発電所(USC)を2基備え、燃料は大半が輸入石炭。一部、木質バイオマスを混焼している。敷地内には1000kWの発電容量の太陽光発電施設も併設している。両社は、燃料となる石炭積み出し港湾施設での作業状況や、原町発電所への入港時の対応、運航時のCO2削減効果等を検証し、本格導入に向けた準備を進めるとしている。

 

 商船三井にとっては、国際海事機関(IMO)が船舶からのGHG排出量削減を2050年までに50%削減(2008年比)とする国際基準に適合するための開発技術の実用化につながる。一方の東北電力は、石炭火力発電のライフサイクル全体でのCO2排出削減の一助になる期待がある。

 

東北電力原町火力発電所
東北電力原町火力発電所

 

 ただ、悩ましいのは、船は風力推進力を活用してCO2排出削減につながる「クリーン船舶」だが、運ぶ荷物がCO2排出量の多い「石炭」という点だ。仮に商船三井が東北電力向けのウィンドチャレンジャー搭載の石炭燃料船の建造資金を調達するために、グリーンボンド発行したら、市場はどう反応するか。商船三井は、昨年グリーンボンド、今年7月にはサステナブルボンドをそれぞれ100億円ずつ発行している。

 

 グリーンファイナンスの資金使途を分類するタクソノミーの議論がEUのサステナブルファイナンス行動計画で示され、日本でも関心が集まっている。グリーンな資金使途をどう特定するかという論争を呼ぶ可能性もある。

https://www.mol.co.jp/pr/2019/index.html