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トヨタ自動車、船舶用の燃料電池(FC)開発。フランスの再生可能エネルギーで世界一周を目指す船に搭載。燃料電池の新たな市場としての期待も(RIEF)

2020-02-07 12:57:43

toyota1キャプチャ

 

 トヨタ自動車は、船舶用の燃料電池(FC)を世界で初めて開発し、再生可能エネルギーで世界一周航海を目指しているフランスの「エナジー・オブザーバー号」向けに提供した。燃料電池自動車(FCV)の「MIRAI」に搭載している部品を用いて、船舶用のコンパクトなFCシステムを開発した。太陽光や風力の再エネ電力や海水から生成した水素を用いることで、船舶は完全自立エネルギーで運航できる。

 

 (写真は、トヨタの燃料電池システムを搭載したフランスの「エナジー・オブザーバー号)

 

 船舶用FCは、トヨタと同社の欧州事業を統括するToyota Motor Europe(TME)が共同で開発した。「エナジー・オブザーバー号」は、2017年6月に母港のフランス北部のサン・マロ港を出発、6年かけて50か国、101の港に立ち寄りながら、世界一周を目指している。昨年末、停泊中の同船にトヨタのFCシステムを搭載した。現在、海上で最終試験中という。トヨタは同船をオフィシャル・パートナーとして支援している。

 

 船舶用FCの開発を担当したTMEは、FCシステムを船舶用に再設計したうえで、部品の製作、コンパクト化、船舶への搭載などを7か月で達成した。トヨタでは、「これまでのトヨタのFC技術が様々な用途に適用できる高い汎用性を持っていることを示す」と評価している。

 

開発した船舶用FC
開発した船舶用FC

 

 今回、船舶用FCを航海船に搭載して実証する作業を通じて、従来の重油等の船舶燃料から再エネ電力への置き換えの可能性を検証する。国際的な温暖化対応で、船舶からのCO2排出規制も強化されていることから、船舶が燃料電池の新たな市場として成長する期待もある。

 

 FCシステムを装備した「エナジー・オブザーバー号」は、今月、母港のサン・マロ港を出港し、大西洋と太平洋を横断する予定という。同船は2015年にフランスのヨットレーサー、ビクトリアン・エルサール氏(Victorien Erussard)と、探検家でドキュメンタリー作家のジェローム・ドラフォス氏(Jérôme Delafosse)が、レース用のボートをエネルギー自立型に改造したもの。

 

 船体の全長31.0m、幅13.0m、遠洋航海時の定員8人、運航速度は再エネ電力使用時で4.5ノット、推進翼使用時で8.0ノット。これまで、25か国、48寄港し、航海距離は約1万8000カイリに達している。

 

「オブザーバー号」の甲板に設置されている太陽光パネル
「エナジー・オブザーバー号」の甲板に設置されている太陽光パネル

 

 トヨタは走行中にCO2を一切出さない次世代の「ゼロ・エミッション車」として燃料電池車を開発している。乗用車の「MIRAI」がその代表だが、最近は、バスやトラックなどへの応用も展開している。船舶での使用が広がれば、燃料電池市場の拡大につながる可能性がある。

https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/31321293.html?padid=ag478_from_kv