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パリ協定連動の「Science-based Initiative(SBI)」署名企業155社、各国政府に対し「コロナ後」の経済対策と気候対策の連携を求める共同声明。日本から丸井、YKKなど参加(RIEF)

2020-05-19 23:52:18

SBT1キャプチャ

 

 国連のグローバルコンパクト等の支援で、企業の気候変動対策を、パリ協定と整合させる「Science-based Initiative(SBI)」に署名する155のグローバル企業は18日、新型コロナウイルス拡大からの経済回復策を最新の気候科学と適合させるよう求める共同声明を公表した。コロナ対策も気候対策も相互に連動しており、別々の取り組みではないと指摘。「コロナ後」の経済対策に取り組む各国政府に対して、気候対策と社会対策の連携を求めた。

 

 共同声明に署名したのは世界33カ国の34セクターに属する155の企業。時価総額2兆4000億㌦、合計の被雇用者数は500万人を超える。共同声明は、「人類の健康は地球の健康に依存している(Human health depends on planetary health)」と強調。コロナ禍からの回復策と、気候変動対策の連動と迅速な対応を求めている。

 

SBT21キャプチャ

 

 そうした共同対策を展開するに際して、声明は3つのポイントをあげている。

 

 まず、より健康で安全な人々と地球につながる「1.5℃目標」の実現を目指すため、SBTに基づく対策を実施することをあげている。そうすることによって、科学に基づいた最善の政策決定を明確に示すよう求めている。

 

 次いで、各国の社会経済をシステミックに転換するための回復(リカバリー)と強靭化(レジリエンス)に投資すること。そのためには、化石燃料関連事業からの投資引き揚げ(Divestment)と低カーボンでレジリエンスなソリューションによって、イノベーションを進める。グリーン雇用と持続可能な成長を優先し、自然と人々を守り、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成を進めることができる。

 

 第三は、各国政府と連携し、こうした行動をスケールアップすることを求めている。各国政府が「1.5℃目標」とゼロカーボン経済とに適合する的確な政策に取り組むことで、政策当局者が企業・ビジネスに対して将来の道筋への信頼を与え、企業が野心的な気候行動をとる必要性を明確にできる、としている。

 

 署名した企業は、ユニリーバ、ネッスル、H&M、ヒューレットパッカード、イケア、EDPなどのグローバル企業が名を連ねた。日本からは、前田建設工業、丸井グループ、高砂熱化学工業、YKKなどが参加した。

 

 コロナウイルス感染拡大からの回復策として、短期的な景気刺激策にとどまらず、気候変動対策と連動する「グリーンリカバリー」とすることへの要請は、EUで欧州議会中心に企業を巻き込んだ形で広がっている。米国でも先週、330社以上の企業のCEOや投資家らが、レジリエントでサステナブルな経済への転換を目指すよう米議会に対して超党派での対応を求める共同声明を提出した。http://rief-jp.org/ct8/102468?ctid=71

http://rief-jp.org/ct6/102128?ctid=71

 インドなど途上国でも、「グリーンリカバリー」議論が出ている。6月に米国でビデオ会議の形で開催する予定の先進七カ国首脳会議(G7)でも大きな焦点になりそうだ。

 

 国連のグテレス事務総長は「命と生活を救い、豊かで、一人も取り残さず、持続可能な未来を築くことは、新型コロナウイルス感染からの回復策の中心に据えられるべきものだ。われわれ自身が『グレーからグリーンへ』向かう行動をとることを通じて、ウイルスに打ち勝ち、気候変動に対応し、新たな雇用を生み出すことができる」と強調する。

 

 さらに155の企業が科学に基づいた温暖化対策のさらなる追求を宣言したことに対して、「多くの企業は、そうすることは可能であり、かつ現在の様な困難な時においても、持続可能な排出削減計画を採用することは、企業利益にもつながることだと、我々に示してくれた。私はこうした野心的で科学に基づいた企業が、各国の政策当局者に対して、グリーン成長が引き続き、ベストな成長戦略であると示してくれたことを歓迎する」と述べている。

 

https://www.unglobalcompact.org/news/4535-05-18-2020

https://unglobalcompact.org/take-action/recover-better-statement