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地球温暖化進行によって、日本を襲う台風の速度が、今世紀末には約10%スピードダウン。台風被害増大を想定。気象庁気象研究所らが推計発表(RIEF)

2020-01-09 12:58:43

taifuu1キャプチャ

 

  気象庁気象研究所は、地球温暖化に伴って、日本に襲来する台風の移動速度が、今世紀末には、従来よりも平均約10%遅くなるとの推計結果を公表した。多数の数値シミュレーショ ンを分析した。推計は現時点を超える政策的な緩和策を講じない場合、との条件付き。台風のスピードが鈍化することは、その分、被害が増大することを意味する。

 

 (上図は、北半球の対流圏中層の500hPa⾼度の⾵速の変化:7⽉から10⽉ の平均)

 

 研究調査は、同研究所のほか、⾹港城市⼤学、済州⼤学の研究者で取り組んだ。研究成果は1⽉8⽇付けの国際的科学誌「Nature Communications」に掲載された。

 

 台⾵による地球温暖化に伴う台⾵の将来予測については、これまで主に強さ、発⽣数、経路などが着⽬されてきた。しかし、台⾵による影響を評価するには、移 動速度の将来変化も⾮常に重要。台⾵の移動速 度が遅いと、ある地点で⾒ると、台⾵の影響を受ける時間が⻑くなる。

 

黒線はこれまでの風速データ、赤線は将来の予測
黒線はこれまでの風速データ、赤線は将来の予測

 

 研究チームは、多数の数値シミュレーションの結果を⽤いて、 地球上で発⽣する全熱帯低気圧を対象に、その移動速度の将来変化 を評価した。その結果、現時点を超える政策的な緩和策を実施せず、温暖化が進んだ場合(RCP8.5シナリオ)、今世紀末での熱帯低気圧の移動速 度は、現在と⽐べると、熱帯・亜熱帯域ではあまり変化しないが、中緯 度帯では約10%遅くなることがわかった、としている。

 

 ⽇本の位置する北 ⻄太平洋域の台⾵のみを対象とした検証でも、同程度遅くなる結果になった。⽇本を含む中緯度帯では、台⾵に伴う影響 を受ける時間が⻑くなることを意味する。 こうした事態が起きるのは、地球温暖化に伴い⼤規模な⼤気の流れが変化し、⽇本上 空の偏⻄⾵が北上、台⾵を移動させる台⾵周辺の⾵が中緯度帯で弱くなることが原因、と指摘している。

https://www.mri-jma.go.jp/Topics/R01/020108/press_release.pdf