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経団連、「2050年ネットゼロ」に向けた電力システムの改革案提言。需要面での電化、水素等の推進、CCUSの活用等を提言。原発の新増設、火力発電も「脱炭素化」で推進(RIEF)

2021-03-10 22:06:51

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 日本経済団体連合会(経団連)は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた電力システムの在り方での提言を発表した。内容は、脱炭素化の実現とともに、産業・運輸・ 民生の各部門のエネルギーシステムの抜本的転換が必要とし、①需要の電化+電源の脱炭素化②需要の水素化+水素製造の脱炭素化③CO2を回収するカーボン回収利用貯留(CCUS)、の3種を組み合わせたエネルギーシ ステムの構築を要請した。火力発電については「脱炭素火力」 を重視し、原発はリプレース・ 新増設も必要としている。

 

 今回の提言は、2019年に「電力改革の方向性」を示した第一次提言に続く第二次提言。この2年での政府の対応や新たな課題も踏まえ、電力システムの構築に向けて官民に求められる取り組みをまとめたとしている。

 

 提言は、目指すべき次世代電力システムを現実のものとするためには、電力を取り巻く投資の好循環形成が前提になると指摘。必要なだけの資金が、最大限効率的に、新たな電力システムの形成に投じられる環境を作り出すことが、日本の大きな課題とし、電力システムへの投資を促進するために、事業者の予見可能性を向上させることが必要としている。

 

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 そのうえで、カーボンニュートラルを最大限効率的に実現するための対象として、①需要の電化+電源の脱炭素化②需要の水素化+水素製造の脱炭素化③CO2を回収するCCUS――の 3 種を組み合わせたエネルギーシ ステムの構築を目的として掲げた。こうしたシステム転換を実現するためには、投資の確保が不可欠と位置付けた。

 

 電源の脱炭素化は避けて通れない課題だが、単に脱炭素電源を積み上げればよいわけではない、とし、電力供給の安定性を確保するため、電源等リソースそれぞれの 特性を考慮したポートフォリオを組むため、長期固定電源、負荷追従電源、変動性電源、蓄電設備に大別した取り組みを求めている。

 

 また脱炭素化は、電源ポートフォリオの脱炭素化に加えて、電力システムの分散化・デジタル化が進展することを想定し、需要のプ ラットフォームとなる電力ネットワークのあり方にも大きな変化が見込まれると指摘。そのために、大規模集中型のシステムと分散型システムの双方を活用して、双方向化・複雑化する潮流を管理し、多様なリソースを電力システムに組み込んで活用するプラットフォームへと進化してい く方向性を示している。

 

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 「2050年ネットゼロ」宣言に伴い、2030年の中間期間の目標設定や取り組みの具体化が求められており、30年の電源構成も求めらられる。だが、経団連の提言は「長期の将来見通しに不確実性が高いことを踏まえ、2030年度の電源構成に関しては、特定の 2050年シナリオを前提とすべきではない」とした。

 

 個別電源のうち、原発については、2050 年に向けた選択肢として原子力を活用していくためには、リプレース・ 新増設も欠かせない、とし、「脱原発」ではなく「増原発」の姿勢を示した。さらに、中長期的な原子力利用の観点から、既存の大型軽水炉に加えて、新型炉活用の可能性も模索すべきとして、小型モジュール炉(SMR)や高温ガス炉、より長期を見据えた核融合炉等の研究開発を、国家プ ロジェクトとして推進すべきとしている。

 

 石炭火力等の火力発電については、今後、再エネ等の変動性電源の導入拡大が見込まれることから、「火力が持つ調整力、慣性力 、同期化力はこれまで以上に重要な能力と評価される」と位置付けている。これらの要素に加えて、エネルギー安全保障の観点も踏まえて、「脱炭素火力」を活用することを基本的な方針とすべきとしている。

 

 「脱炭素火力」は、燃料として水素・アンモニアの専焼に切り替えるほか、CCUSを活用すること等で実現する。そのため提言は、 こうした分野のイノベーション創出に取り組むことを強調。特にカーボンニュートラルに向けた過渡期では、化石燃料改質によって生成された水素・アンモ ニア(いわゆるグレー水素、グレーアンモニア)の活用や、当面のCO2排出削 減にもなる水素・アンモニア・バイオマス混焼等をあげている。

 

 ただ、そうした「脱炭素」要因の付与によって火力発電の発電コストがアップし、再エネ等に対して競争力を失うことの評価については触れていない。

 

http://www.keidanren.or.jp/policy/2021/025_honbun.pdf