HOME |住友商事、バングラデシュのマタバリ石炭火力発電所拡張事業を断念へ。「石炭火力発電事業の例外条項」を削除。パリ協定と整合しないことを認める。株主総会での株主提案を回避か(RIEF) |

住友商事、バングラデシュのマタバリ石炭火力発電所拡張事業を断念へ。「石炭火力発電事業の例外条項」を削除。パリ協定と整合しないことを認める。株主総会での株主提案を回避か(RIEF)

2022-02-28 18:40:28

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 住友商事は28日、同社の環境政策の基本方針を見直し、新規の石炭火力発電事業・建設工事請負の「例外条項」を削除したと発表した。この結果、同社が関与しているバングラデシュの「マタバリ石炭火力発電所」の拡張事業への取り組みを断念した。同火力発電建設をめぐっては内外の環境NGO等の反対運動が続いており、昨年の株主総会では環境NGOから事業停止を求める株主提案が提起された。

  同社が見直したのは「気候変動問題に対する方針」。2021年5月に従来の方針を改定し、焦点の石炭火力については、「新規の発電事業・建設工事請負には取り組まない」とする一方で、「注」として例外事項を定めていた。https://rief-jp.org/ct4/113936

 「唯一の例外として、当社が建設請負工事業者として現在参画しているバングラデシュ マタバリ1&2号機の拡張案件として同国・本邦政府間で検討が進められているマタバリ3&4号機については、今後、様々なステークホルダーと対話を重ね、パリ協定との整合性を確認したうえで、参画の是非を検討する」という内容だった。

 同条項ではマタバリの拡張案件を「今後検討する可能性のある唯一の石炭火力関連事業」と位置付けていた。今回、この例外規定を削除したことにより、焦点となっていた拡張案件事業への取り組みを断念したことになる。

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 住友商事のマタバリ事業への関与については昨年、オーストラリアの環境金融NGOマーケット・フォース(MF)が、パリ協定の「1.5℃目標」に沿った経営を行う事業戦略を盛り込んだ計画の策定を求める株主議案を提出した。提案は総会で採択されなかったが、投資家からは約20%の賛同を得た。同社では昨年のCOP26で国際的に「1.5℃目標」を目指す合意をしたことも踏まえ、マタバリ事業のこれ以上の推進には無理があると判断したとみられる。https://rief-jp.org/ct7/112709

  マタバリ石炭火力拡張計画は、バングラデシュ南東部チョットグラム管区のマタバリ地区に、発電出力600MWの超々臨界圧石炭火力発電所(USC)を2基(合計1200MW)増設する計画。2014年に当時の安倍政権による日本・バングラデシュ首脳間合意で打ち出された「ベンガル湾産業成長地帯(BIG-B)」構想の中核プロジェクトの1つ。

 全体の事業実施期間は2014年6月から2027年1月で、総事業費約1兆1357億円という巨大プロジェクトだ。マタバリ石炭火力は同地に建設する経済特区への電力供給を目指している。発電所に付随する港湾部分はすでに住友商事や五洋建設が工事を担当している。マタバリの拡張工事分は国際協力機構(JICA)の融資(円借款:1431億2,700万円)が決まっている。https://rief-jp.org/ct10/118014

 住友商事の「マタバリ撤退」の決定とともに、石炭火力事業を軸にしたバングラデシュ開発支援計画を推進してきた日本政府、JICA等についても、計画の見直しと、エネルギー源の再エネ転換による国際協力事業全体の再構築が求められる。

 住友商事は今回の工事断念に際して、「今後も、各国地域社会および産業の発展と脱炭素化の取り組みに協力・参画するとともに、長期目標である2050年の住友商事グループの事業活動のカーボンニュートラル化や持続可能なエネルギーサイクルの実現に向けた取り組みを継続し、気候変動問題の解決に貢献していく」とコメントしている。すでに工事に着工しているマタバリ1&2号機については事業を継続するとしている。

https://www.sumitomocorp.com/ja/jp/news/release/2022/group/15490

https://www.sumitomocorp.com/ja/jp/news/release/2021/group/14700