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台風等の強風に強く、低コストの浮体式洋上風車開発のアルバトロス・テクノロジー、 独立系ベンチャーキャピタルから1億円の資金調達。小型実験機での海上実験への準備可能に(RIEF)

2022-09-29 00:06:34

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 垂直軸受け型の浮体式洋上風力発電の開発に取り組むベンチャー企業のアルバトロス・テクノロジー(東京)は、独立系ベンチャーキャピタルのジェネシア・ベンチャーズから1億円を資金調達したと発表した。調達資金で、同社が開発中の垂直軸型風力発電の小型海上実験の準備に入る。同社の風車は海水を風車の軸受とする単純構造で、台風などで風車が傾斜しても性能が低下しにくい特性を持ち、日本の海域に適しているとされる。

 

 アルバトロス・テクノロジーは2012年創業のベンチャー企業。同社が開発する浮遊軸型風車(Floating Axis Wind Turbine: FAWT、ファウト)は、円筒の浮体そのものが回転しつつ垂直軸型風車を支える仕組みで、海水を風車の軸受とする構造が特徴だ。

 

 このため風車が強風で傾斜しても回転性能が低下しにくく、最大出力時に20度までの傾きなら許容できるとしている。浮体式の洋上風力発電は、強風時対策として、風車の直立不動姿勢を維持するために大型の浮体が必要とされるが、同社の仕組みでは、大型浮体は不要で、大幅にコストを低減できるという。

 

大型浮体が不要な垂直型風車
大型浮体が不要な垂直型風車

 

 同社はこれまで、電源開発株式会社(Jパワー)茅ヶ崎研究所、大阪大学との3者で浮体式垂直軸型風車に関する共同研究を実施し、革新複合材料研究開発センターICC(金沢工業大学)と連携して炭素繊維強化プラスチック風車の新たな製造法を検討してきた。

 

 同風車の特徴は低コスト化が可能という点だ。風車部分は、カーボン複合材料の連続引抜き成形で低コスト生産が可能で、発電機も含めて100%国内調達できる。設置に際しても、大型のクレーンを使わずに組立・海上設置ができることから、水深の浅い港を基地港として利用できる。発電性能は、風車直径10m以上のスケールの場合、従来型(水平軸型)風車と同等以上の発電性能が得られるとしている。

 

 今回、ジェネシア・ベンチャーズからの投資資金によって、これまでの模型実験から一歩踏み出す。調達資金で、出力20kW未満の小型実験機を製作し、港湾内での初の海上実験に取り組む。実験機は複数の大手電力、海運会社と連携して製作し、2024年度に実際の海上での実験を始める予定。

 

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 実験機の風車部製造は、連続引抜き成形を得意とする福井ファイバーテック(愛知県)、浮体製造は、みらい造船(宮城県)がそれぞれ担当する。最初の海上実験の成果を受けて公的な助成金支援等を前提に、500kW~5MWクラスでの実証実験を2年程度の開発期間で実施。その後に商用化につなげたい考えだ。

 

 ジェネシア・ベンチャーズ パートナーの河合将文氏は「従来型の浮体式風車では、製造・設置・保守コストが高くなるほか、風車産業の国産化による国内経済への還元が難しい状況にある。アルバトロスでは、浮体式に特化したFAWTを開発することで、大幅なコスト削減による再エネの普及と脱炭素社会の実現、純国産化による産業創造と地域経済への貢献、エネルギー安全保障の確保を目指している」と評価している。

https://www.genesiaventures.com/investment-albatross_technology/

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