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ベトナムのバイオマス燃料の認証偽装事件で、偽装企業からの輸入燃料を抱えた日本の大手商社が、手持ちの約3万㌧分を韓国の欧州系企業に転売。損切り処理か(RIEF)

2022-12-12 11:24:45

AVP0033キャプチャ

 

  ベトナムの大手バイオマス燃料業者が、国際的な森林認証のFSC認証を偽装していた問題で、同社の燃料を国内のバイオマス発電所に納入するために輸入した日本の大手商社が、国内企業に売却できず、韓国の欧州系企業に損失覚悟で転売したとみられることがわかった。業界関係者によると、売却されたとみられる日本向けの木質ペレット燃料は約3万㌧分。2億円以上の損失を出したと推計される。

 

 (写真は、AVPが輸出する木質ペレットの搬送作業の状況=AVPのサイトから)

 

 FSCの認証を偽装していたのは、ベトナムで最大の同ペレット製造業者のAn Viet Phat Energy(AVP)社。ベトナムから日本への木質ペレット輸出は同社からの輸入分を含め、毎年150万㌧以上に及ぶ。AVPが最大の輸出先として知られてきた。輸入は日本の三井物産、伊藤忠商事、JFE商事等がAVP製品の主要な取引先だったとされている。https://rief-jp.org/ct10/129368?ctid=72

 

 例えば、JERAの常陸那珂火力発電所(茨城県東海村)では、これらの商社の中から調達したバイオマス燃料(木質ペレット)を石炭火力発電に混焼してCO2排出量削減に活用してきた。ところが、同発電所では9月にバイオマス受入施設(ホッパー建屋)で火災事故が起きている。AVPの低品質燃料が原因と指摘されている。https://rief-jp.org/ct4/130119

 

 こうした不祥事発覚のほか、偽装認証の燃料をバイオマス発電に利用して、経済産業省が運営する固定価格買取制度(FIT)による電力買い取りを受ける場合、偽装により本来の価格よりも「過払い」を得ることになるため、いずれ行政から還付請求等を受ける可能性が出ている。経産省の「過払い額」は年間100億~160億円前後に上るとの見方もある。バイオマス発電所側は、AVPの燃料を使えば使うほど、将来の過払い負担が増大し、行政処罰を受ける可能性も出てくるため、同社燃料の受け取りを拒否しているとみられる。https://rief-jp.org/ct5/129862?ctid=72

 

 AVPと輸入契約を結んでいる商社にすれば、日本市場に販売できなくなった手持ちの輸入燃料については、AVPに引き取りを要求できるはずだ。だが、そうはせず、韓国に転売したということは、AVPが引き取りを拒否したためともみられる。転売先とみられるのは、再エネ燃料等を扱う欧州系の韓国企業とみられる。

 

 業界筋によると、韓国企業への販売価格はCFR(運賃込み条件)でトン当たり約90㌦と見込まれる。買い取った韓国企業は韓国内のバイオマス発電所に同180~190㌦で売却したとみられる。日本商社のAVPからの買い取り額は、これも推計だがFOB (本船渡し)でトン当たり150㌦前後とみられ、転売額との差額で約60㌦の損失が生じる計算だ。3万㌧全体での損切り額は約2億4000万円とみられる。

 

 当該の日本商社は、現在、AVPとの取引を中止したとされる。ただ、他の日本商社の中には依然、同社との取引を続けているところもあるという。AVPが新規の輸出用木質ペレットを正規の認証を得た燃料に切り替えていれば問題はないが、すでにFSCはAVPに対して2026年までの排除措置を講じている。

 

 さらに当該措置は2020年のAVP製品の調査に基づくもので、FSCはそれ以外の年の同社製品についても調査を継続しており、同社がFSCの新規認証を得ることは当分、できそうもない状況にある。他の認証団体も、AVPの問題を重視しておりAVPが木質ペレットの新規認証を得るのはほぼ不可能といえる。https://rief-jp.org/ct10/129368?ctid=72

 

 同社からの輸入燃料は、日本のFIT制度のバイオマス発電燃料の分類では、これまで「一般木質バイオマス・同固体燃料」とみなされ、発電電力は1kWh当たり24円で買い上げられてきた。しかし、FSC認証を得られなくなったことから、従来の燃料も「廃棄物・その他のバイオマス」の扱いとなり、買い取り価格は同17円とkWh当たりで7円価格が下がる。

 

 AVPからの輸入燃料を抱える商社は、国内市場での正規の販売が不可能なことから、手持ちの輸入燃料については、今回のケースのように他国の市場に転売することを模索するとともに、国内発電事業者への燃料供給を継続するため、タイ等の他の木質ペレット輸出国での輸出業者との契約を進めているとされる。

 

 韓国では2021年10月から「新エネルギー・再生可能エネルギーの開発・利用・普及促進法」の改正法による再エネ供給義務化制度(RPS)が改正施行されている。同制度は一定規模以上(50万kW)の発電事業者(供給義務者)に対し、総発電量の一定割合以上をバイオマス発電を含む再エネ発電とすることを義務付けている。

 

 AVPの輸出用木質ペレットはこれまでも、日本市場と韓国市場を最大の輸出先としてきた。2021年の日韓両国市場でのベトナムからのバイオマス燃料の輸入量は合計600万㌧とされる。韓国の木質バイオマス電力の生産量は2012年の約14万MWhから、7年後の2019年には50倍の707万MWhに増大。輸入木質ペレットも2012年の年間12万㌧から20年には300万㌧へと急増している。

https://jp.fsc.org/jp-ja/newsfeed/fsc-blocks-an-viet-phat-energy-for-making-false-claims-on-large-volumes-of-wood-pellets

https://anvietenergy.com/