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IHIとシンガポール政府研究機関「ISCE」。水素とCO2を原料とした航空機用の「持続可能な航空燃料(SAF)」開発で連携。年内に小規模なCO2注入プロセス試験を実施へ(RIEF)

2024-06-24 16:34:19

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写真は、試験装置の設置イメージ=IHIサイトから)

 

 IHIは24日、シンガポール政府の研究機関と連携し、水素とCO2から航空燃料用の持続可能な航空燃料(SAF)の原料となる液体炭化水素を合成する技術の開発事業を「新たなステージ」に進めると発表した。これまでの開発プロセスを検証する試験装置を設置し、年内に実際にCO2を注入する小規模スケールでの試験を開始する。SAFは航空機のCO2排出量削減の有力手段とされるが、現在はバイオ燃料からの製造で、コスト面と、大量に確保できるかが課題となっている。

 

 水素とCO2から合成燃料のSAFを作り出す技術開発は、同社とシンガポール政府の科学技術研究庁傘下の研究機関「ISCE:Institute of Sustainability for Chemicals, Energy and Environment」が連携して進めている。両者は、これまでの研究により、CO2を原料とした低級オレフィン合成に活用できる高性能の触媒を開発した。同触媒は、SAFの原料となる液体炭化水素の収率で、世界トップレベルの水準(26%)の達成を確認できているという。

 

 こうした成果を受けて、今回、液体炭化水素を水素とCO2から合成するプロセスを検証するための試験装置を、ISCDE内に設置することを決めた。9月までに同装置を設置し、1日当たり100kgのCO2を注入する小型スケールでの試験を、年内に開始する予定としている。

水素とCO2からSAFを作り出す流れ
水素とCO2からSAFを作り出す流れ

 

 IHIらの計画では、SAF原料となるCO2は、工場等から排出されるCO2や、大気中からDAC技術で直接回収したCO2等を活用する。水素は太陽光発電等の再エネ電力で水を電気分解して取り入れる。これらの燃料を反応器の中で触媒を介して反応させることで、SAFを創出する。

 

 今回、設置を決めた試験装置では、これまでに開発した触媒の性能や耐久性評価を実施する。さらに合成プラントの運転条件の最適化や反応器データの取得などを行って、プロセス全体の検証を進めていくとしている。


 
 国際民間航空機関(ICAO)は2050年までに航空機のCO2排出を実質ゼロにする長期目標を掲げている。航空機のCO2削減策としては、機体そのものを電気自動車(EV)のように電動化する方法と、燃料を脱炭素化する方法があり、両方とも開発が進行中だ。現在、各航空会社が保有する機体を前提とする場合、燃料を従来の化石燃料由来のジェット燃料からSAFへの転換が有力視されている。

 

 すでに多くの航空会社が国際便等にSAF混焼の燃料を活用しているが、現行の混焼率は10%程度にとどまっている。現在のSAFはバイオ燃料を元にしていることから、コスト面と量的な確保が課題だ。これに対して、IHI等が開発する水素とCO2を原料とする方式では、燃料の合成化の効率性を高めることができれば、大量生産が可能で、コスト面の課題克服の可能性もある。



 IHIは「環境にやさしく、経済的な航空機におけるカーボンニュートラルを実現するため、効率的かつ安定的なSAF製造技術の早期確立に向けて開発を推進していく」とコメントしている。

https://www.ihi.co.jp/all_news/2024/technology/1200870_13684.html