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最高裁、アスベスト訴訟で、国の不作為の違法を認める。建設労働者に防塵マスクの義務付け怠る。国とメーカーに賠償責任認定(各紙)

2021-05-18 12:15:52

Asbestosuキャプチャ

 

 建設現場でアスベスト(石綿)を吸って健康被害を受けた元建設労働者や遺族ら計約500人が国と建材メーカーに損害賠償を求めた4件の集団訴訟で、最高裁第一小法廷(深山卓也裁判長)は17日、国が防塵マスクの義務付け等の対策を怠った違法があるとの判断を示す判決を出した。国の不作為の違法性を認めた。

 

 訴訟は横浜、東京、京都、大阪の各地裁で2008~11年にかけて、原告計約500人が提起していた。しかし、国やメーカーの責任について、これまで二審の結論が分かれ、原告と被告の双方が最高裁に上告した。最高裁第一小法廷は昨年12月以降、国やメーカーの責任を相次いで認定する判断を示してきた。判決で京都訴訟は確定、他の3件は賠償額を算定するため審理を東京、大阪の各高裁に差し戻した。

 今回の第一小法廷の判断は裁判官5人全員一致の意見。第一小法廷は判決理由として、国はアスベストの吹き付け作業を禁じた1975年には、人がアスベストを吸引することによって肺がんや中皮腫を発症する危険性を認識していたと指摘した。にもかかわらず、アスベストを扱う建設事業者に労働者らへの防塵マスク着用を義務付けたり、建材に危険物であることを表示するようメーカーに指導することを怠ったと認定。国がアスベスト使用を原則禁止多2004年までの29年間を違法との判断を示した。

 

 また労働法令では、労働者と見なされない個人事業主の「一人親方」についても、「労働者と同等に保護されるべきだ」として、救済対象に含めた。国(労働省)は判決を受けて、被害者一人当たり最高1300万円の和解金の支払い方針を固めたほか、元労働者らの救済措置も講じると報じられている。アスベスト訴訟は今回の4件を含め、全国33件で1200人が訴えている。今回の判決を受けて、他の訴訟も含めて和解が進むとみられる。

 

 メーカー責任については、16年の京都地裁判決が初めて認めた。最高裁判決も、メーカーが警告表示なしにアスベストを含有する建材を販売し、労働者らに吸引させる結果となったことも違法と認定した。労働者は複数の工事現場等で作業をするため、どのメーカーの建材が病気の原因になったかの特定は困難だが、建材の販売量や販売期間等と作業実績を突き合わせることで「建材と被害の因果関係を推定する」とし、メーカーの賠償責任を認めた。

 

 アスベストは、天然素材で耐火性があり、熱や摩擦に強い等の利点から、「奇跡の鉱物」として1950年代以降、カナダや南アフリカ等から大量に輸入され、断熱材等の建材として活用されてきた。しかし、大気中に飛散した粉塵を大量に吸い込むことで、肺で中皮腫等の肺疾患を発症することがわかり、72年に世界保健機関(WHO)が発がん性を指摘し、労働省は75年に建設事業者に吹き付け作業を禁じる等の措置を講じた。しかし、労働者へのマスク着用等は義務付けなかった。

 

 その後、国は2004年から明日部酢tの使用を原則禁止した。しかし、阪神大震災等の際には、既存の建物等に使用されたアスベストが倒壊し、空中に飛散、周辺の住民が吸い込み、健康被害を受けるという事態も起きた。現在もアスベスト使用の古い建物等の解体に際しては、アスベストの飛散を防ぐ工法が義務付けられている。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210517/k10013035241000.html

https://www.tokyo-np.co.jp/article/104847?rct=national