HOME |欧州の西欧中心に、「冬の干ばつ」広がる。イタリア・ベネチアでは運河の水が枯渇、名物のゴンドラ船が一時、航行不能に。フランスでは水不足で、水の割り当てめぐる懸念も浮上(各紙) |

欧州の西欧中心に、「冬の干ばつ」広がる。イタリア・ベネチアでは運河の水が枯渇、名物のゴンドラ船が一時、航行不能に。フランスでは水不足で、水の割り当てめぐる懸念も浮上(各紙)

2023-02-27 21:38:13

Venis003キャプチャ

  各紙の報道によると、欧州全域で「冬の干ばつ」が深刻化している。昨年夏には歴史的な干ばつが起きたが、冬の干ばつでは、各地で野菜等の農産物の収穫に影響が出ているほか、「水の都」のイタリア・ベネチアでは、少雨と低潮が重なって、運河の水が消え去り、観光客向けのゴンドラ船が運航できない状態に陥った。一方で、一部、ルーマニア北部では豪雨で洪水が起きる等の事態も起きており、気候変動の激化が「気候異変」を各地で起こしている。

 (写真は、運河が干上がって運行不能となったイタリア・ベネチアのゴンドラ船=英Guardian紙)

 観光地ベネチアは今月に入ってから少雨の影響で町を巡る運河の水位が急低下し続けた。Guardian等の報道によると、今月20日には干潮時の水位が通常の基準より70cm低くなり、過去最低を記録した。その後、水位は回復したが、一時は運河が使えず、水上タクシーや水上救急船等も停止状態に追い込まれたという。少雨と高気圧、干潮が重なったことが大きいと指摘されている。

観光客も、運河が干上がったのでびっくり(ベネチアで:Guardian紙)
観光客も、運河が干上がったのでびっくり(ベネチアで:Guardian紙)

 イタリアで最長のポー川は、アルプスから流れ出た水をアドリア海に運ぶ。だが、今年の冬は平年に比べて水量が61%も少ない。少雨に加えて、気候変動の影響で、アルプスのスキー場での降雪が少ないほか、氷河の融解が進んでいることも影響している。ポー川はイタリアの農業生産に必要な水の約3分の1を供給するとされ、農業生産への影響が懸念されている。イタリアは昨年7月の干害で過去70年来の被害を受け、緊急事態宣言を発した経緯がある。

 フランスも同様に干害が続いている。南西部のグラウセット湖( Lac des Graoussettes)の水位は干上がり、農業への影響が広がっている。フランス気象局(Forecaster Météo Franceによると、1月21日から2月21日まで1mm以上の雨の降らない日が32日間続き、観測を始めた1959年以来、過去最長を記録した。

 同湖の水は、リンゴ、プラム、ウォールナッツ、トマト、イチゴ等を栽培する周辺農家にとって重要な資源となっており、収穫への影響が懸念されている。継続する干ばつの影響で、仏南東部のバール県では、日中の芝生の水やりや洗車が禁止された。また、大量の水使用が必要な、農業や発電、工場などの間で、使用する水の割当量をめぐる対立を生じる懸念も出ている。

 このうち、南西部ランド県では21日、農家が水の割り当て維持を求めるデモを実施した。ただ、その後、26日には一転して、気温が低下、南東部では吹雪模様の降雪となった。今後の予想で最も悲観的な傾向が続くと、今年の夏も水不足に陥ることは避けられない状況という。ルーマニアでも先週、局地的な豪雨が北部地帯に集中して降り、洪水が発生した。

   ドイツは1月前半の気温が平年よりも8.2℃も高い「暖かい冬」となった。その後2月になると気温が急低下、各地で降雪が広がった。西欧中心部での高温と少雨による干害の広がりは、高気圧が長期にわたって地域全体を覆い、気温の上昇をもたらしたことが要因とみられている。地球温暖化の進展で、気候変動や気圧のパターンが例年とは異なる変化を起しやすくなっていることが要因とみられる。

 https://www.euronews.com/2023/02/22/europe-is-experiencing-a-winter-drought-heres-what-you-should-know