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有機フッ素化合物(PFAS)の健康調査、規模拡大に環境省が「後ろ向き」。防衛省の米軍との事故漏洩公表の大幅遅れとともに、国民を守らない役所の姿勢を露呈(各紙)

2023-07-26 12:15:07

MOEキャプチャ

 

写真は、環境省の専門家会議の模様=朝日新聞から)

 

 各紙の報道によると、発がん性が疑われる有機フッ素化合物(PFAS)が全国の米銀基地施設や工場周辺地域等で検出されている問題を議論する環境省の「PFAS総合戦略検討専門家会議」は25日会合を開いた。席上、汚染地域での住民の血液検査の実施について、環境省が「慎重に検討すべき」との対応策を示した。これをめぐって、会議に出席した専門家から「後ろ向きだ」等の批判があがった。その結果、一部地域の住民に限っていた血液検査を全国規模に広げる方針とした。

 

 東京新聞等の報道によると、環境省は毎年度、全国的なPFASの血液検査を約100人規模で試験的に実施しているという。同省はこの日の会議で、今後の調査について規模拡大などを検討するとしつつ、汚染濃度が高い地域での調査については「慎重に検討すべきだ」とする案を会議で示した。

 

 その理由として「血中濃度のみを測定しても健康影響を把握することができない」「(水などの)環境中の調査強化で対応することが妥当」としたとされる。

 

 こうした環境省の案に対して、専門会員の京都先端科学大学の高野裕久教授(環境医学)は「『慎重に』ということは入るのか。(調査が)前向きか、後ろ向きかが違ってくる」と指摘した。京都大学の原田浩二准教授(環境衛生学)も「(こうした案だと)自治体が『(血液検査を)あまりやらなくてよい』と判断する材料になる恐れがある」と述べた。

 

 また群馬大学の鯉渕典之教授(環境生理学)は、原田准教授が市民団体と実施した多摩地域での血液検査などの実例をあげて、「既存の調査結果等を十分に活用していくべきではないか」などと提案した。

 

 これらの専門家の指摘を受け、環境省は一部地域の住民に限っていた血液検査を全国規模に広げる方針としたものの、調査の規模がどれくらいになるかは不明だ。環境省が血液検査の拡大に慎重な姿勢を示したのは、米軍に配慮する政府方針に基づくものかもしれない。ただ、人体の血液検査と、周辺環境の環境調査は、両方があってこそ汚染の状況把握につながる環境調査の基本である。

 

 環境省の役人は、自らの役所の存立基盤でもある環境汚染対策の基本を無視しようとしたともいえる。いや、同省は、これまでもこの問題に積極的に取り組んできておらず、長くPFAS問題を「無視してきた」といえる。日米関係が大事だとしても、基地が原因で起きた問題は早急に解決し、被害を受けた国民を救済するのが、この国の役所の本来の責務だ。

 

 この問題では、米軍横田基地で2010~12年に発生したPFASを含む泡消火剤が漏出した事故を防衛省が把握したのは、2019年1月だったとされるが、同省がその公表をめぐって米軍との交渉が長引き、実際に東京都に漏出を伝えて公表したのは今年6月。防衛省は「何を防衛しているのか」との疑問が国民の間に生じている。国民の健康・命を軽んじているとの指摘もある。環境省、防衛省とも役所の「基本」に立ち返るべきだ。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/265376?rct=t_news

https://digital.asahi.com/articles/ASR7T6RWZR7TUTFL00P.html