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ロサンゼルス市、日本製の耐震水道管を試験的に敷設(WSJ)

2013-04-18 01:05:41

米ロサンゼルスで日本製の耐震管の試験敷設を監督するロス市水道電気局の土木監督者クレイグ・デービス氏
米ロサンゼルスで日本製の耐震管の試験敷設を監督するロス市水道電気局の土木監督者クレイグ・デービス氏
米ロサンゼルスで日本製の耐震管の試験敷設を監督するロス市水道電気局の土木監督者クレイグ・デービス氏


米カリフォルニア州ロサンゼルス市は、大地震に備え、ある戦略を思い付いた。日本でのみ製造されている耐震水道管の導入だ。ロサンゼルス市水道電気局は先日、サンフェルナンドバレーに約2000フィート(約610メートル)の特殊な鉄を用いた水道管を試験敷設する工事を終えた。

 

水道管は日本のクボタが開発したもので、地盤の変形に耐えうる設計になっている。クボタの水道管は日本で40年の実績を持ち、その耐震性はマグニチュード(M)9.0の地震が津波を引き起こし、東北地方を中心に甚大な被害をもたらした2011年の東日本大震災でも実証済みだ。

 

それら「ダクタイル鋳鉄管」と呼ばれる水道管は、従来のものとは異なり、地震に耐えるよう圧力がかかっても折れずに曲がったり、収縮する構造になっている。鎖のように動くよう設計されているため、さまざまな部品が動いてもバラバラに壊れることはない。

 

ロス市水道電気局の土木監督者クレイグ・デービス氏がこの水道管について知ったのは03年で、11年の大震災直後にクボタと交渉し、ロスの試験プロジェクト用に一部輸入することを決めた。同氏によると、サンフランシスコやポートランド、シアトルの水道当局からも問い合わせがあり、同様のプロジェクトへの関心を示しているという。「これ(耐震管)については、われわれはまだ学び始めたばかりだ。この配管システムが耐震型だと特定できたのは本当につい最近のことだ」とデービス氏は話す。同氏は、昨年作業員のトレーニング担当主任を日本に派遣したほか、日本人スタッフ2人にロスの現場で工事を監督してもらっている。

 

まずは全長7000マイルの水道管のうち約2マイルのみを耐震管に付け替え、断層線に近い最もぜい弱な部分への敷設に限定する計画だ。耐震管は高額で、ロスで使用されている標準の水道管の約2.5倍する。

 

最初の試験敷設の費用は10万6000ドル(約1035万円)で、今秋開始予定の6500フィートにおよぶ2回目の敷設工事の費用は90万ドル。ロス市当局はコスト軽減に向け、クボタが特許出願中の米国で製造パートナーを見つけられるよう、支援している。

 

200マイル強離れたシエラネバダ山脈からカリフォルニア南部に水を供給しているロス上水路は、1世紀前に建設されたもので、市当局は数年前から最も古く、ぜい弱な鋳鉄管の付け替えや更新を積極的に進めている。ロス市水道電気局によると、63年以降2290マイルにわたって水道管を新設したほか、06年以降107マイルの水道管を付け替えている。

 

だが、市の至る所で給水主管の破裂が発生し、工事に追われる事態となっている。土木担当者によると、破裂が頻発するようになった原因には、週の特定時間帯の屋外での水やりを制限する規則が施行され、同時に水やりをする住民が増えたことで、水道管の水圧が増幅したことが関係している可能性があるという。

 

日本製の耐震管は伸縮・屈曲し、水漏れや破裂を生じさせないため、震動や地滑り、極端な温度変化などの圧力に耐えることができる、と耐震管について研究する米コーネル大学大学院土木環境工学科のトーマス・オローク教授は説明する。また、そのような柔軟性のある継ぎ手は固定されても強さを十分維持することができ、配管に大量の水を通すことが可能だ。ダクタイル鋳鉄管は米国の一部企業も製造しているが、それらは地震を念頭に置いて設計されているわけでも、日本ほど多くの地震を通じて試験や研究が行われているわけでもない、とオローク教授は説明する。