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フクシマの訴え「暮らしを根こそぎ奪った」~福島相馬市の被災者が 玄海原発訴訟で弁論(NETIBニュース)

2013-09-29 01:31:30

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47都道府県6,751人の市民が国と九州電力を相手取って玄海原子力発電所の操業停止を求めた「原発なくそう!九州玄海訴訟」の口頭弁論が9月27日、佐賀地裁で開かれた。福島県相馬市の被災者で原告の中島孝氏(57)と、長崎の被爆者で原告の川原進氏(68)が意見陳述した。中島氏は、福島原発事故の被害と現状を語り、「いったん事故を起こせば取り返しがつかない。言葉に尽くせぬ大変な事態を、我々は福島で日々体験している」と訴えた。

川原氏は、「原発も、ピカドンと同じように放射性物質をまき散らし、内部被曝を起こす」と述べ、「私の(被爆)体験と、(福島第一原発事故で)内部被曝を受けた人たちの今後が重なるように見える。ヒロシマ、ナガサキが苦しんできたように、同じことが起こるのではないかと恐ろしい」と、放射能の危険性を訴え、ピカドンも原発もない「核なき世界」を呼びかけた。

 

中島氏は、福島原発の被害者が原状回復を求めて福島地裁に提訴した「『生業を返せ、地域を返せ!』福島原発訴訟の原告団長。相馬市でスーパーを経営し、店から1kmのところにある漁港に水揚げされる新鮮な魚を販売していた。震災の直後は、店の近くまで津波が押し寄せ、「津波の最前線に唯一残った店」となった。地震から2年半経過したが、再建のめどが立たない。「地元相馬の魚を中心とした営みは大きくねじまがった」と語った。fukusima1

 

相馬市は放射線量の高い山中のダムが水道水源になっている。市は安全としているが、「市民は不安に思い、ペットボトルの水でご飯を炊き、みそ汁をつくっている家庭が今も多くある」と紹介。一方、低線量被曝の健康被害をめぐって、意見の対立が、市民同士の分断を生んでいると述べた。

 

「放射能の危険に脅えることのない平穏な環境で生活することは、我々の最も基本の権利」と指摘し、「原発は止まるもの、なくなるものと思っていた。国も電力会社もフクシマから何も学ばないのか。また第2のフクシマを引き起こすつもりなのか」と、怒りを込めて告発した。

 

原発事故の被害とはなにか、福島県民が日々直面していることはなにか。「地域が丸ごと失われ、暮らしが根こそぎなくなってしまうこと。明日を信じられないこと。ここまで頑張れば救われるという励みを持てずに暮らすこと」と、中島氏は訴えた。

 

「私が福島からこの裁判に参加したのも、同じ事故を2度と起こしてはいけないという強い憤りからです。原発を再稼働することは、半永久的に続く福島の被害を容認すること、再び事故が起きることを容認することだ」

 

原告側は、原発の被害について、400ページ以上の準備書面を提出。放射能による健康被害が重大で取り返しがつかないにもかかわらず、国が原子力利用を推進するために、被爆放射線基準をゆるめ、命と健康を軽視していると指摘。原発事故は、自然災害と違って、復旧復興まで長期間かかり、回復不可能で、被害が終わらないこと、家族の分断、文化の喪失、生業と生きがいを奪い、金銭で事後的に回復することはできない被害だとしている。

 

原発労働者の被爆、事故が起きなくても稼働しているだけで周辺住民に生じている健康被害、処分方法が未確立なまま放射性廃棄物を大量に生み出していることをあげて、原発の稼働そのものが被害を引き起こすと述べている。

 

次回弁論は、12月20日。九州電力・国が原告の主張に反論する。

 

報告集会で、板井優弁護団共同代表は「いよいよ九電、国が反論する。どう勝っていくか。なぜ戦争ができなくなったのか。1945年の前と後で何が違うか。憲法ができた。ルールが変わった。公害も同じだ」と力説。「原発を止めるには、ルールを変えなければいけない。それには、国民世論を変えないといけない。福島の思いを日本全体のものにし、日本全体の思いを福島の思いにする。そのことが原発廃炉の力」と訴えた。
【山本 弘之】