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東京海上日動、台風・豪雨被害を抑制するため、「避難費用前払い」を保証した「逃げ遅れゼロ保険」開発へ。住民参加の実証実験で検証し、2022年にも発売へ(RIEF)

2021-08-20 13:50:20

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 東京海上日動火災保険は20日、頻発する台風や豪雨被害に対応し、災害発生前に早めの避難を奨励して「逃げ遅れゼロ」を目指す新保険商品を開発するため、9月から住民参加の実証実験を始める。自治体の避難指示が出た段階で、住民に避難費用を保険で前払いする仕組みを開発する。逃げ遅れを減らすことで、人命を救うとともに、保険金支払額の抑制につながる期待もある。

 

 実証実験には、東京海上日動のほか、東京海上ディーアール、日本電気(NEC)、福山コンサルタントが共同で参加する。実証実験はNECが軸になっている「高松市スーパーシティ構想」の対象地域である香川県高松市で、9月から10月の1カ月の予定で実施する。東京海上等も同構想に参加している。

 

 同地区の住民約250人が対象だ。台風や大雨等の水災が発生する可能性がある場合、自治体から災害に関する避難情報の警戒レベル4が発動された段階で、東京海上が対象者に対して避難を促す連絡をメールで送る。それを受けて、住民らは決められた避難場所やホテル等に移動するが、その際に必要な移動費用、ホテル・旅館等での宿泊費用として、東京海上が2万円を支給する。

 

実証実験の概要
実証実験の概要

 

 実証実験では、避難費用を支払う事前避難奨励の仕組みが、住民の行動変容につながるかどうかを検証する。東京海上では検証結果を踏まえて、22年度中の商品化を目指すとしている。

 

 消防庁によると、2019年度に自治体が発令した避難勧告は全国で1056件。避難指示は353件に上る。しかし最近は、この夏の西日本豪雨のように、連日のように避難指示が発令され続けると、住民側もどの時点で避難すればいいかの判断が難しい状況が生じている。今回の取り組みは、こうした住民の判断を支援することが期待される。

 

 実証実験では避難費用の支払いは、避難指示発令後に払い込むが、保険商品として実用化後は前払いを前提にする。個人向け保険で避難費用を前払いする商品はこれまで日本の損保商品としては例がない。商品化に際しては、キャッシュレス事業者と組み、即時払いできる体制を構築する。契約者にはAR(拡張現実)をスマートフォンにダウンロードしてもらう。スマホには被害のイメージ画像や避難経路も示す。事前避難後に、実際の被害が軽度に済んだ場合でも避難費用の返金は求めない。

 

 東京海上では、住民への避難奨励に際して、損保事業で蓄積した災害データや降雨量を基に計算した被災予測情報を、事前に保険契約者に対して通知する仕組みについても検討するとしている。災害予測の分析には人工衛星画像等を活用する方針。

https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/company/release/pdf/210820_01.pdf