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東京海上ホールディングス。「東アフリカ原油パイプライン事業(EACOP)」の保険引き受けに関与の可能性。環境NGOが指摘。東海上は「関与の有無」を回答せず(RIEF)

2023-06-27 15:00:25

Tokioキャプチャ

 

  環境NGOの350.org Japanは26日、国際的に注目されている東アフリカでフランスのトタル・エナジーが開発を目指す「東アフリカ原油パイプライン建設事業(EACOP)」事業に、日本の東京海上ホールディングスが関与している可能性があると発表した。EACOP事業からは、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC) と三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が撤退を表明したが、同日開いた東京海上の株主総会で、同社は関与の有無を問う質問に回答を拒否した。このため、NGO側は同社が関与している可能性を指摘し、同社に対して「EACOP事業を含む新規化石燃料事業への保険引受停止を求める」と求めている。

 

 EACOPは、アフリカのウガンダで産出する石油をパイプラインで港湾のあるタンザニアにまで輸送する事業。全長1443kmの世界最長の加熱式原油パイプラインを建設する予定だ。しかし、石油生産による大量のCO2排出や、ラムサール条約で指定された湿地・野生生物保護区における生態系破壊、約4000万人の周辺住民の生活を支える水資源の汚染リスク、そうした住民への事業関係者による人権侵害等の懸念から、国際的に事業の推進に懸念が集まっている。


  事業へのファイナンス面では、SMBCがトタル・エナジーの財務アドバ イザーのほか、投融資の大半を占めるプロジェクト・ファイナンスの共同幹事行も務めていた。しかし、SMBCは5月上旬に、事業への関与を否定し、撤退した。その後、MUFGも6月初めに「支援に関与していない」と表明した。みずほフィナンシャルグループは、SMBC、MUFGの判断に先駆けて、「現在進行中の環境・社会的課題が解決されない限り、EACOPに融資する可能性はない」とのスタンスを打ち出し、関与していないとされる。https://rief-jp.org/ct7/136070?ctid=

https://rief-jp.org/ct1/135563?ctid=

 大手邦銀3行全てが同事業への関与を停止した一方で、保険引受事業でも、チューリッヒ、アクサ、アリアンツ、ミュンヘン再保険等の欧州系の主要保険会社22社が、同プロジェクトへの関与を否定している。しかし、日本の東京海上は、海外のNGO等から関与の可能性を指摘されてきた。同社は今回の株主総会でも、その点について「個別案件には答えられない」として回答の明確化を拒否した。

 

 この点で350.orgは「以前、東京海上は、オーストラリアのカーマイケル炭鉱事業への個別の関与を否定したことがある。(今回の)個別の案件だからコメントできないという理由は、一貫性が欠如している。世界の大手保険会社が本事業への関与を否定している中、東京海上が明確に関与を否定しないことに対しては、企業価値の損失に繋がることを懸念する」と指摘している。

 

 保険会社に限らず、日本の金融機関は、取引に伴う「個別案件については回答しなくてもいい」と一般的に理解しているようだ。確かに、個別取引は取引双方の企業活動に密接に関連するので、問われたからと言って、存否を含めて回答するかどうかは当該企業の判断に基づく。しかし、企業活動を超える国際的な環境、社会的課題の場合、そこに自社が関係している場合は、回答しないこと自体が、自社が掲げるESG方針に反する場合が生じる。

 

 今回の場合、欧米の各社が個別案件にもかかわらず、同事業への関与の有無を明確にしているのは、自社のESG方針に照らして、同事業に個別取引として関与することはそぐわないとの判断に基づくとみられる。海外勢の個別案件の取り扱いを踏まえれば、日本企業が、個別案件を理由として回答を避けること自体が、自社のESG方針に反する行動であり、そうした主張を貫くことが自社の評判リスクを高め、投資家にとってもリスク要因となることを肝に銘じるべきだろう。

https://world.350.org/ja/press-release/20230626/