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地方自治体発行のESG債、今年度はグリーンボンド中心に、静岡、滋賀等の14自治体が発行へ。前年度より6件の増加。資金使途先等の徹底した情報開示が課題(各紙)

2022-04-06 09:42:04

shizuokaキャプチャ

 

  地方自治体によるグリーンボンド等のESG債の発行が増えている。各紙の報道によると、2022年度は全国で14の自治体が発行を予定しているという。21年度に比べて6自治体が増える形だ。さらに22年度以降に発行を検討中の自治体も4件、名乗りをあげている。これらを含めると、市場で地方債を発行する自治体の3割がESG債を発行ないし、検討していることになるという。ただ、これらの自治体ESG債の中にも、資金使途が通常の事業だったり、リンク債の場合は、目標達成が出来なかった際の投資家向け金利引き上げの代わりに寄付として、自治体内で資金を回すような「ウォッシュ債」も出始めている。

 

 (写真は、今月中のグリーンボンド発行を予定している静岡県の県庁舎)

 

 日本経済新聞が報じた。それによると、同紙が市場公募の地方債を発行する59自治体(22年3月時点)を対象にヒアリングしたところ、埼玉、静岡、滋賀、大阪、兵庫の5府県と仙台市、大阪市が22年度中に初めて発行する意向を明らかにした。また、22年度以降の発行については、相模原市と名古屋市、京都市、熊本市の4自治体が検討の意向を示したという。

 

 これまで自治体のESG債発行は、長野県、神奈川県、三重県、川崎市等がグリーンボンドの発行を実施している。新たに今年度内の発行を予定している滋賀県は県庁舎の温室効果ガス排出削減に向けた対策費として50億円規模のサステナビリティ・リンク・ボンドの発行を今月中に予定している。

 

 また仙台市も新庁舎の省エネ向上等のため、50億円規模のグリーンボンドの発行を予定している。大阪市は国際金融都市推進のために同ボンド発行を目指している。静岡県も50億円程度の同ボンドを発行し、気候変動に対応した水害、治山、地滑り対策や津波・高潮防御施設整備などの適応事業等への資金を投じることを想定しているとしている。

 

 地方債の21年度発行額は2755億円と20年度の7倍に増えた。日本証券業協会によると、企業のESG債発行額は21年に約2兆円と前年比で8割近く増加している。国内のESG債発行はこれまで企業が先行する形だったが、自治体の発行が増えることで、市場の安定拡大が見込まれる。

 

 ただ、国内企業のESG債で「ウオッシュ債」問題が生じているように、自治体のESG債についても資金使途が「マテリアル(重要)なESG分野」ではなく、本来は一般財源で対応すべきものが混在しているケースも少なくない。ESG債の主要な買い手となる年金等の機関投資家は、地方債、ESG債という名前だけでなく、資金使途の「ESG度」をしっかり見抜く必要がある。

 

 発行自治体も資金使途先については当然だが、資金管理、リスク管理等についても、議会での報告と同時に、投資家向け、さらには自治体住民向けの情報開示を徹底する必要がある。

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220406&ng=DGKKZO59743470W2A400C2EP0000