EUの欧州監督機構(ESAs)、SFDRでの天然ガスと原発の情報開示案を欧州委に提示。来年1月以降、両事業を盛り込んだサステナブルファイナンス投資商品の登場は技術的には可能に(RIEF)
2022-10-03 07:58:01
EUの欧州監督機構(ESAs)は、先にEUがサステナブルファイナンスのタクソノミーに天然ガスと原発をトランジション(移行)措置として盛り込んだことを踏まえ、金融機関に課すサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)での規制技術基準(RTS)において両事業の扱いを定めた最終案を欧州委員会に示した。同案では金融機関が提供する投資商品に両事業が盛り込まれているかどうかをわかり易く開示するほか、含まれている場合は投資商品におけるその比率も開示するとしている。
ESAsの判断を受けて、欧州委はSFDRのRTSを修正し、2023年1月から施行する。これにより、SFDRが示すサステナブルファイナンス投資商品において、両事業を投資先とするファンド等の提供は技術的には可能になる。ただ、実際にそうしたファンドが登場するかどうかは流動的だ。
ESAsはEUの銀行監督当局である欧州銀行監督機構(EBA)、欧州証券市場機構(ESMA)、欧州保険・年金監督機構(EIOPA)の3機関で構成する。EUは7月の欧州議会と欧州理事会で、タクソノミーに天然ガスと原発を含めることを決定した。これを受けて欧州委は8月初めにESAsに対し、SFDRで定める投資商品の投資先事業・企業に両事業が含まれるかどうか、含まれる場合はどう扱うかという情報開示上の扱いの明確化を求めていた。
ESAsが示した案では、これらの事業のSFDRのRTSでの取り扱いに際して、①SFDRの対象となる投資商品が両事業活動に投資するかどうかを確認する「イエス/ノー」の質問を追加する②「イエス」の場合は、投資商品に占めるそれらの事業への投資比率を図で表示するよう求めるべき③その他の委任法(DA)でのマイナーな技術的修正を行うことー-とした。
SFDRでのこれらの情報開示は、取り扱い金融機関のウェブサイト上で開示される契約前書類において、定期的に報告されるものとなる。ESAsは、現行のSFDRの情報開示規定は、タクソノミーでカバーされていない天然ガスや原発についても適用できるとした。欧州委員会はESAsのこの判断を受けて、現行のRTSを精査し、3カ月以内に改定RTSを承認する。
ESAsの案は、通常は必要とされる一般のパブリックコンサルテーション期間を経ていない。だが、欧州委は「事態の緊急性(23年1月からの実施)」に鑑みて、コンサル期間設定の代わりに、特定の消費者団体や関連機関等から意見についてフィードバックを得る形とした。
今回のESAsの判断により、タクソノミーに盛り込んだ天然ガスと原発へ投資する事業も、来年1月から、SFDRの8条ファンド(ライトグリーン)、9条ファンド(ダークグリーン)に盛り込まれることが可能になる。
ただ、政治的には、両事業をタクソノミーに含めることに対してオーストラリアが今月中にも、欧州司法裁判所に欧州委を提訴する姿勢を崩していない。また環境NGO等の反発も強いことから、両事業を盛り込んだファンドが登場すると、消費者からのボイコット等の事態を招く懸念もある。このため、実際に、両事業を投資先とするSFDRファンドが登場する可能性は、現状では低いとみられる。