HOME |太平洋セメント。同社初のトランジション・リンク・ローン(TLL)借り入れ。日本政策投資銀行から約100億円。2030年までにサプライチェーンでのCO2排出削減20%等を目指す(RIEF) |

太平洋セメント。同社初のトランジション・リンク・ローン(TLL)借り入れ。日本政策投資銀行から約100億円。2030年までにサプライチェーンでのCO2排出削減20%等を目指す(RIEF)

2023-03-08 18:08:41

taiheiyoucementキャプチャ

 

 太平洋セメントは8日、同社として初めてトランジション・リンク・ローン(TLL)約100億円を日本政策投資銀行から借り入れたと発表した。2030年の同社のCO2削減目標の達成をはかる重要業績指標(KPIs)には、サプライチェーンのCO2削減の原単位と、同社全体のCO2排出量削減を設定し、SPTsには①サプライチェーンで20%削減(2000年比)②同社全体では40%削減(同)とした。

 

 セメント業界は、鉄鋼、化学等と並ぶ高炭素集約型産業として知られる。太平洋セメントの事業活動から排出されるGHGのうち全体の約92%は、セメントの製造工程から発生する。このため、2015年の「CSR目標2025」では、「セメント製造にかかわるネットCO2排出原単位を2000年度比10%以上削減」することを目標に設定。 昨年3月にはカーボンニュートラルに向けた「2030中間目標」として「サプライチェーン全体でのCO2排出原単位を20%以上削減、CO2排出総量(国内)40%以上削減 (ともに2000年比)」を定めている。

 

 今回のトランジション・リンク・ローンの借り入れは、この「2030中間目標」の達成に資することを目指す。SPTsは①②とも、「中間目標」をそのまま採用している。現状の達成率は、①の原単位削減が9.6%(21年度実績)、②の排出総量削減は35%(同)。セカンドオピニオンを付与した日本格付研究所(JCR)は前者について、30年までの原単位の平均減少率(年0.67%)に比して、同社の過去の平均減少率は年0.4%で、現在の取り組みを続けるだけでは目標達成は困難で、①のSPTは「野心的」と評価した。

 

 一方の②の排出総量については、目標達成に必要な平均減少率は年率1.33%、同社の過去の平均減少率は年率1.1%であり、国内のセメント需要が今後減少見込みであることを踏まえると、その差の克服は、それほど厳しくはないように映る。しかし、JCRは「2030年までに可能な施策は、省エネ活動の積み重ねや、廃棄物由来エネルギーの利用拡大に限られる」として、こちらも「野心的」と評価した。

 

 同社は、23年中計期間(2021年度~2023年度)で革新的技術への投資として研究開発名目で200億円を行う予定とするほか、2030年度までの10年間でのカーボンニュートラルへの取り組みに 1,000億円を投じる計画を立てている。

 

 ただ、今回のTLLの借り入れは公表したものの、正確な借入金額、借り入れ期間、金利、SPT未達の場合の対応等は開示していない。同社はTLLについて「当社にトランジション戦略の進展や達成に対するインセンティブをもたらし、ひいては社会における脱炭素化・低炭素化を促進させることを目的とする」と位置付ける。そうであるならば、社会に貢献するCO2排出量の実質的な削減量が見える形の情報開示が望ましい。

https://www.taiheiyo-cement.co.jp/news/news/pdf/230308.pdf