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欧州消費者団体「欧州消費者機構(BEUC)」、23の消費者団体とともに、域内17の航空会社の「SAF」使用強調の広告は「グリーンウォッシュ」だとして、使用禁止を欧州委に要請(RIEF)

2023-06-26 18:25:33

EUAirline003キャプチャ

 

    欧州の消費者団体の包括機関である「欧州消費者機構(BEUC)」は22日、欧州19カ国の23の個別団体とともに、 独ルフトハンザや仏エアフランス等の17の航空会社によるサステナブルな航空をアピールする広告は、消費者を欺く「グリーンウォッシング」として、同広告の禁止を求める請求を欧州委員会等に提出した。航空各社は、ジェット燃料にバイオマス由来の持続可能な燃料(SAF)を混焼して「サステナブル」「カーボンニュートラル」と強調するが、実際の混焼率は極めて限定的で、サステナブルにはほど遠いと強調。にもかかわらず追加的な「グリーン料金」の徴収例もあり、消費者を欺いているとしている。

 

 BEUCが請求を提出したのは、欧州委のほか、各国の消費者保護機関ネットワーク(CPC)の両機関だ。BEUCのこれまでの調査では、各航空会社がEU域内で展開している「サステナブル航空」の広告では、SAF利用で航空機からのCO2排出量が削減され、最終的にはネットゼロの達成を目指すもの、とする内容だ。

 

 しかし、現状の各航空会社によるSAF利用率は1%前後でしかなく、非常に限られた割合といえる。EUが設定する義務的目標でも、2025年までにジェット燃料への混焼率2%、30年で6%でしかない。同燃料の大半は依然、化石燃料からのケロシンが占めることになる。BEUCは、「こうした限定的な割合でしかないのに、消費者に対して、航空機を使った旅行は、サステナブル、との印象を与える広告を展開している」と批判している。

 

 BEUCによるEU全域での調査の結果、こうした航空会社のミスキャンペーンが17の航空会社に共通することを突き止めたとしている。提訴した航空会社は、Air Baltic、Air Dolomiti、Air France、Austrian、Brussels Airlines、Eurowings、Finnair、KLM、Lufthansa、Norwegian、Ryanair、SAS、SWISS、TAP、Volotea、Vueling、Wizz Airの各社。

 

 同機関は「航空機での旅行は、現状は明らかにサステナブルではなく、また近い将来にそうなる可能性もない。なのに、こうした主張に基づく消費者向けの広告を展開することは、明らかにウソである。しかも、航空会社によっては、そうした消費者を欺く主張に基づき、利用者から追加の『グリーン料金』を徴収するところもある」と批判。各国のCPC機関に対して、「これらの航空会社に対して、消費者に課した偽りのグリーン料金を返済するよう強制すべきだ」と求めている。

 BEUCの副事務局長のUrsula Pachl氏は「航空機による旅行は、温室効果ガス(GHG)排出量の重要かつ増大し続ける割合となっていることは明らかだ。 航空会社が『CO2補償』や『CO2ニュートラル』のような、気候フレンドリーなメッセージで、消費者を自由に騙すことは信じ難い。EU機関および各国当局は、この消費者を欺くグリーンウォッシングな活動を取り締まるべきだ」と指摘している。

 さらに消費者に対しても「航空機利用に際して『グリーン料金』を払うかどうかとは関係なく、航空機を利用する場合は、気候に有害な影響を与える排出量を出しているということを忘れてはならない。脱炭素航空のための技術的ソリューションは、近く、大規模なスケールで実現可能になる状況にはない。したがって、航空機利用を『サステナブルな輸送モード』と表現することは、明確なグリーンウォッシングなのだ」と強調している。

 こうした指摘に対して、欧州の主要な航空業界団体の「Airlines for Europe (A4E)」は、「航空会社は常に、乗客の要求に対して、高い透明性をもって適合している。欧州の航空会社は、サステナビリティに関する透明性の高いコミュニケーションの必要性を認識しており、航空産業界全体は、2050年のネットゼロの達成に向けて積極的に活動している」と説明。BECUの指摘は当たらないと反発している。

 航空会社がSAF混焼を強調することに対する消費者の違和感は、米国でも起きている。今月初め、米国第二位の航空会社のデルタ航空(アトランタ)が展開する「カーボンニュートラル」キャンペーンは虚偽であり消費者を欺くとして、同社に対する集団訴訟が提訴された。提訴によると、同航空は2050年カーボンニュートラルを掲げて、市場シェアを高め、航空券も相対的に高くても環境意識の高い消費者にアピールしているが、同社のCO2排出削減は、主に外部のカーボンクレジットの購入によるものであり、実際の航空事業からの排出削減は不十分で「グリーンウォッシング」と批判されている。https://rief-jp.org/ct4/136040?ctid=

 日本の航空大手の日本航空グループでは、同社の「グループ環境方針」において、「JALグループは、環境マネジメントシステムを構築し、以下の取り組みを確実に実行することで環境の負荷を低減していく」として、「気候変動への対応」では「脱炭素社会の実現に向けて」として、①航空機からのCO2排出量を削減する②地上施設、地上車両等からのCO2排出量を削減する、と記載している。

 全日空は、「航空機の運航における取り組み」において、「ANAグループは、2030年度までに、国際線・国内線合わせてCO2排出量を2019年度比で実質10%以上削減していく。目標達成のため、SAFの活用を中核とする4つの戦略的アプローチを組み合わせ、経済合理性との両立も追求しながら、2050年カーボンニュートラルを実現していく」とうたっている。

https://www.beuc.eu/press-releases/consumer-groups-launch-eu-wide-complaint-against-17-airlines-greenwashing