HOME10.電力・エネルギー |経産省等。国の指定海域での洋上風力発電事業者、第二ラウンドで3海域を決定。JERA連合、三井物産連合、住友商事系と3グループに均等配分。価格よりも事業実施時期を最優先(RIEF) |

経産省等。国の指定海域での洋上風力発電事業者、第二ラウンドで3海域を決定。JERA連合、三井物産連合、住友商事系と3グループに均等配分。価格よりも事業実施時期を最優先(RIEF)

2023-12-14 00:50:38

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写真は、三菱商事の洋上風力発電事業の模様)

 

 経済産業省と国土交通省は13日、国が指定した秋田、新潟、長崎3県の各海域で洋上風力発電(いずれも着床式)を担う事業者の公募結果を発表した。それによると、秋田事業は国内最大の火力発電事業者であるJERAと伊藤忠商事、電源開発の企業連合、新潟は三井物産、RWE Offshore Wind Japan、大阪ガスの連合、長崎は住友商事と東京電力リニューアブルパワーの連合がそれぞれ選定された。2022年12月の第一回公募では対象3地域全部を、三菱商事と中部電力系企業の連合が落札し大きな話題を集めた。その後、入札方式を修正し、今回の公募では、3企業連合に「均等」に配分した形となった。

 

 洋上風力発電事業の公募は、再エネ海域利用法に基づき、両省が風力発電開発の促進地域を指定、長期にわたる海域の占有等を国が認め、都道府県等とも連携して推進する優先開発地域となる。促進地域での事業者は最大30年間、対象海域を占有できる。

 

 今回の公募対象は、「秋田県八峰町・能代市沖」、「秋田県男鹿市・潟上市・秋田市沖」、「新潟県村上市・胎内市沖」、「長崎県西海市江島沖」の計4区域。このうち、最初の「秋田県八峰町・能代市沖」については、選定対象の事業体の事業計画が、「秋田県男鹿市以下」の海域を落札したJERA等の企業連合の計画と一部、重なるため、調整に時間が必要として、決定を来年3月に先送りした。

 

 今回の入札の上限価格は、秋田県と新潟県沖の3区域について19円/kWh、長崎県沖は29円/kWhに設定した。長崎の場合、地質構造上、海底に固定する基礎工法のコストが高くなるためとした。

 

 事業者が決定した「秋田県男鹿市・潟上市・秋田市沖」の事業は、JERA連合の「男鹿・潟上・秋田 Offshore Green Energyコンソーシアム」が事業体。入札には他に2事業体が参加した。JERA連合は、Vestas社製のV236 (出力15MW)を21基設置し、総出力31.5万kWとする計画。価格評価は3事業体とも同じだったが、事業の実施能力等の評価点で上回った。運転開始時期も2028年6月30日と最も早い。

 

 「新潟県村上市・胎内市沖」事業は、三井物産等が連携する「村上胎内洋上風力 コンソーシアム」が事業体で、他に3事業体が応札した。物産等は、GEの次世代大型風車タービンとされるHaliade-X(出力18MW)を38基整備し、総出力を68.4万kWとする最大規模の計画を示した。運転開始予定時期も2029年6月30日と早い。こちらも価格評価はほぼ同列だったが、事業実現性評価で差がついた。

 

洋上風力発電の建設風景=三菱商事のサイトから
洋上風力発電の建設風景=三菱商事のサイトから

 

 住友商事と東電連携の「長崎県西海市江島沖」の事業体は「みらいえのしまコンソーシアム」。他に1事業体が応札し、ともにVestas V236(15MW)を活用する計画を示した。この案件では事業実現性評価点では、他の事業体が上回ったが、価格点評価で住商連合が30点近い差をつけた。運転開始予定は2029年8月31日とし、他事業体より1年早い。選定された3事業体はいずれも、運転開始が2030年よりも早い点を評価された形だ。

 

 2022年12月の最初の再エネ海域利用法に基づく入札(第一ラウンド)では、対象とした「秋田県能代市・三種町・男鹿市沖」、「同県由利本荘市沖」、「千葉県銚子市沖」の3海域すべてで、三菱商事と中部電力系企業のコンソーシアムが落札した。入札上限価格29円/kWhに対して、それぞれ13.26円/kWh、11.99円/kWh、16.49円/kWhと半値以下から半値水準の低価格だったことから、大きな話題を集めた。

 

 その後、第一回入札選定の評価手法への疑問等から、公募方式が改められたが、その修正をめぐって、独立系風力発電事業大手の日本風力開発の創業者で前社長が、国会で入札方式の改定を質問するよう衆院議員の秋本真利被告に働きかけ、見返りを得たとの贈収賄容疑で在宅起訴される事件が起きている。https://rief-jp.org/ct4/140025?ctid=

 

 その日本風力開発については、今回の経産省等の第二回入札結果の発表の前日の12日に、前田建設工業等を傘下に持つ「インフロニア・ホールディングス」が、米投資ファンドの米ベインキャピタル(Bain Capital)から買収するという形で、経営面での決着がついている。経産省等の今回の発表は、日本風力開発の買収発表のタイミングをとらえて、公表に踏み切ったようにも見える。https://rief-jp.org/ct4/141311

 

 政府は2030年度の電源構成に占める再エネ発電の割合を現状の2倍程度の36~38%に増やす計画だ。このうち、洋上風力については、2030年に1000万kW、40年までに3000万〜4500万kW分を想定している。ただ、これまでの公募での認定はいずれも着床式の洋上風力発電のため、設置海域が限られる。技術面、コスト面で課題はあるが、浮体式洋上風力発電の開発・展開にどこまで政府が本腰を入れられるかが課題だ。

 

 閉幕した国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では、約130か国が2030年までに再エネ発電を現状より3倍増、エネルギー効率(省エネ化)を同2倍増とすることで合意している。日本政府も公約に参加した。同公約を実現するには、エネルギー基本計画での「再エネ2倍増」を修正しなければならない。だが、環境相が「3倍増」に消極的発言をするなど、すでに腰は引けている。洋上風力発電が日本の海域で花開くかどうかは、すべて、日本政府の「政策的野心」次第というところのようだ。

https://rief-jp.org/ct5/141272?ctid=71

https://www.meti.go.jp/press/2023/12/20231213003/20231213003.html

https://www.meti.go.jp/press/2022/09/20220930004/20220930004.html