年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は3日、日本株運用に環境・社会・ガバナンス(ESG)要素を組み込むために3つのESG指数を選定した、と公表した。ESG3要素をすべて対象とした総合型指数として英系の FTSEと米系のMSCIの両指数、社会に絞ったテーマ型としてMSCIの女性活躍指数を選んだ。当面、合わせて1兆円規模の資金をESG株投資に振り向ける。
3指数は、FTSE Blossom Japan Index、MSCI ジャパン ESG セレクト・リーダーズ指数、MSCI 日本株女性活躍指数(愛称 WIN)。このほか、環境のテーマ型指数について継続審査中という。
GPIFは昨年夏以降、ESG株価指数の公募を実施、国内外から合計14社、27指数の応募を受けた。これらを①ESG評価の高い銘柄を選別する「ポジティブ・スクリーニン グ」②公開情報をもとに企業のESGを評価し、その評価手法や評価結果も開示③ESG評価会社 及び指数会社のガバナンス体制・利益相反管理――の3点を重視して、選定した。
GPIFでは、ESGに配慮した投資は、投資期間が長期にわたるほどリスク調整後のリターンを改善する効果が期待される、としている。当面、日本株運用の約3%に1兆円の資金をESG日本株運用に投じる予定で、3~5年かけて日本株運用の1割に当たる3兆円規模に拡大する予定という。http://rief-jp.org/ct4/70961
高橋則広理事長は「今回選定したESG指数の活用が、日本企業のESG評価を高めるインセンティブとなり、長期的 な企業価値の向上につながるよう期待している。ESGを重視する海外の長期投資家がこの点に 着目すれば、日本株の投資収益が改善する可能性も高まる。こうしたインベストメント・チ ェーンの最適化を図ることができるのが、ユニバーサル・オーナー(広範なポートフォリオ を持つ大規模な投資家)であるGPIFの役割だ」とコメントした。
今回の3指数の運用は国内株式のパッシブ運用に限定しているが、将来的にESG株運用の規模を拡大する際には、パッシブ、アクティブ運用両方を視野に入れるとしている。また 外国株式を対象としたESG投資については、現行のマネジャー・エントリー制の枠組みで提案を受け付け、 順次審査を行う方針だ。
今回選定した3指数の特徴は次にように説明されている。
FTSE Blossom Japan Indexは、ESG指数として世界でも有数の歴史を持つFTSEの指数シリーズFTSE4Good Japan Indexの業種ウエイトを 中立化したESG総合型指数。 企業との対話(エンゲージメント)で国際基準に則ったESG評価軸を用いつつ、日本企業に対応。指数構成銘柄数は151銘柄(2017年6月時点)。
MSCI ジャパン ESG セレクト・リーダーズ指数は、世界で1000社以上が利用するMSCIのESGリサーチに基づくもので、様々なESGリスクを包括的に市場 ポートフォリオに反映したESG総合型指数。構成銘柄数は251銘柄(同)。
MSCI 日本株女性活躍指数(愛称 WIN)は女性活躍推進法による女性雇用関連データに基づき、性別多様性スコアを算出、各業種か ら性別多様性スコアの高い企業を選んだ指数。将来的な労働人口減少リスクの高い日本では、女性活躍を推進する企業は労働力を確保しやすく、長 期的事業持続性に勝る、とされる。構成銘柄は212銘柄(同)。
http://www.gpif.go.jp/operation/pdf/esg_selection.pdf