HOME |環境省、電源開発(Jパワー)の旧式石炭火力発電所の更新延命事業を条件付きで「認める」意見書提出。COP26後、G7諸国で石炭火力延命を打ち出したのは日本が初めて(各紙) |

環境省、電源開発(Jパワー)の旧式石炭火力発電所の更新延命事業を条件付きで「認める」意見書提出。COP26後、G7諸国で石炭火力延命を打ち出したのは日本が初めて(各紙)

2021-12-17 01:14:34

Jパワーキャプチャ

 

 環境省は16日、電源開発(Jパワー)が長崎県で進める石炭火力発電所の更新計画に対し、環境アセスメント法に基づく環境相名での意見表明を行った。意見は発電所の継続を前提にして、代替燃料への転換等を求める内容。本来は「2050年ネットゼロ、30年46%削減」の国の公約を踏まえれば、温暖化政策に責任を負う環境省は、「石炭火力は延命させるべきでない」との意見を示すべきと思われるが、経産省の方針に基づいて修正条件を示しただけだった。COP26後に、先進七カ国(G7)で、継続が疑われる石炭火力の継続を環境省も含めて推進する国は、日本だけだ。

 

 対象となったJパワーの発電所計画は、長崎県西海市で1981年から操業中の旧式の超臨界圧(SC)型の松島火力発電所2号機(出力50万kW)。同機に、CO2排出削減のためのガス設備を取り付けて操業を長引かせる更新計画だ。Jパワーによると、今回の更新事業で発電効率を高め、CO2排出量を現行より10%ほど削減できるとしている。

 

 各紙の報道では、「将来的にはバイオマスやアンモニアの混焼、CO2回収・貯留技術も活用し、50年までに『ゼロエミッション火力」の実現を目指す」と説明しているというが、具体的な燃料転換の計画や、ゼロエミッション化の投資計画等は示されていない。

 

 しかし、16日に環境省が山口壮環境相名で、荻生田光一経産相に対して出した意見書では、「2030年や50年に向けたCO2排出削減への対応の道筋が描けない場合には、事業実施の再検討を含め、あらゆる選択肢を検討することが重要」等として、更新事業は認めたうえで、不都合が生じた場合に再検討することを求める内容にとどまった。

 

 こうした環境省の「弱腰」の姿勢に、環境NGOの気候ネットワーク(KIKO)は「(同計画は)今求められる気候変動対策や国際社会の動向と不整合で、わが国の不十分な削減目標とも整合しないので(環境省)は『是認できない』 と厳しく指摘すべきだったが、同意見は事実上容認するもので極めて遺憾」との声明を出した。

 

 政府が「2050年ネットゼロ、30年46%削減」の公約を国際的にも掲げる一方で、具体的な政策レベルでは旧式の石炭火力の延命事業を環境・経産両省が「役割分担」をしながら、推進する構図は、国の目標と足元の政策とが連動していないことを証明するような展開だ。

 

 排出削減を段階的、効率的に進めるには、発電総量に占める石炭火力発電全体の排出量への個々の発電所の寄与度を踏まえて、操業寿命が近いもの、旧式のもの等を、順次退出させるロードマップが必要になる。だが、環境省も経産省もそうした全体像に基づく道筋を示さず、個別発電所の事業性の評価だけでとどめようとしている。

 

 米証券取引委員会(SEC)委員のクレンショー氏は、「ネットゼロの宣言だけして、それを実現するための具体的な対策を立てない企業・金融機関は『ウサギの穴』に入っているようなもの」と形容した。わが国では、企業・金融機関だけでなく、政府自体が『ウサギの穴』に入って、「ネットゼロをやっている」と国民にうそぶいているようだ。https://rief-jp.org/ct4/120852

 

 環境アセスメント法の手続きでは、事業者が計画段階で環境への影響などを評価した報告書を計4回作成し公表する。経産相は最終的な計画の認可を判断するまでに、環境相の意見を勘案して事業者に意見を伝えるシステムだ。しかし、本来、政治家である環境相、経産相は手続法に則った意見表明とは別に、国全体の政策転換を求められる局面においては、政治家としての意見を表明すべきだろう。だが、役所のシナリオ通りに振る舞うだけの「大臣」の場合は、そうした政治性も持ち合わせていないということのようだ。

https://www.kikonet.org/wp/wp-content/uploads/2021/12/20211216_GENESIS_Matsushima_MOEComments.pdf

https://r.nikkei.com/article/DGXZQOUA163H10W1A211C2000000/?type=my#AAAUAgAAMA

https://mainichi.jp/articles/20211216/k00/00m/010/240000c