HOME11.CSR |EU、上場企業の役員の男女均衡義務化。社外取締役は40%以上、全取締役は33%以上。2026年6月までに法制化。欧州委の提案から10年後、ようやく「ガラスの天井」破る(RIEF) |

EU、上場企業の役員の男女均衡義務化。社外取締役は40%以上、全取締役は33%以上。2026年6月までに法制化。欧州委の提案から10年後、ようやく「ガラスの天井」破る(RIEF)

2022-06-08 23:22:36

EUvondearlienキャプチャ

 

 EUの欧州議会と各加盟国は7日、域内上場企業の取締役会に占める女性の比率を、社外取締役は少なくとも40%とし、各加盟国が全取締役を対象とする場合は、男女それぞれの最低割合を33%以上とする指令案で合意した。2026年6月末までに同ルールを法制化する。欧州委員会が企業取締役の男女均衡義務化の提案をしたのは2012年。10年の議論を経て、ようやくルール合意にたどり着いたことになる。

 

 (写真は、10年ぶりで、男女均衡義務化法案での合意を導き出した欧州委員会のフォンデアライエン委員長㊧)

 

 欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は「欧州委が指令案を提案して以来、10年を経過し、ようやく『ガラスの天井』を破る時が来た。すでに多くの女性が企業トップを率いる能力を身に着けており、企業は彼女たちを十分に活用できる」とルール合意の成果を強調した。

 

 今回の合意に基づき、欧州議会と各国で構成する欧州理事会は同合意を法制化する指令を26年6月末までに制定することになる。各加盟国は指令に基づき自国の会社法等を改正する。各企業は同指令と国内法の改正に基づき、自社の取締役選任プロセスを透明で明確化するよう改定する必要が生じる。

 

 役員選任プロセスの改正に際して、現状で男女均衡義務化のEU目標を達成できていない上場企業の場合は、資格等が同等の役員候補が2人いる場合、女性(最低割合が低い性別)候補者を優先的に選出するべき(shall)とする規定を盛り込む。

 

 企業の取締役候補で、取締役に適任にもかかわらず、性別等の理由で選ばれなかった人からの要請がある場合、企業は自社の役員選出クライテリアを公表しなければならない。また性別差別の疑いのある取締役選出があった場合、企業はその疑惑を解明する責任を負うことも盛り込んだ。

 

 指令の目的に合致しない企業は、そうなった理由を説明するとともに、課題を解決するための手段を公表しなければならない。加盟国は、対象企業が取締役選出や男女均衡化義務の報告を遵守することに失敗した場合、当該企業に対して罰則を科す。それらの罰則には、当該取締役の指名の取り消しや罰金支払い等も含む。加盟国は、目標を達成している企業に関する情報を公開することで、未達企業に対する「ピア・プレッシャー」を与える措置の実施も求められる。

 

 欧州委員会によると、欧州の大学卒業生の60%は女性。しかし、就職後の企業で、女性が高いポジションに就くことは限定的で、その改善スピードも非常に遅い、としている。現在は、社外取締役の3分の1(31.3%)が女性となっており、2010年の11.9%からは改善されている。だが、依然、社外取締役10人中7人は男性ということだ。全取締役に占める女性の割合になるともっと少ない。

 

 国別でみると、エストニアは社外取締役に占める女性の割合は9%と低い。フランスは45%を占める。フランスは女性比率40%の自国基準を設けているが、EU加盟国の中で唯一、国の基準を上回って、女性取締役が選出されている。ただ、現在、27カ国中、国別法的基準を設定しているのは9カ国にとどまっている。

https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_22_3478