各紙の報道によると、外務省は22日、バングラデシュのマタバリ2と、インドネシアのインドラマユの両石炭火力発電事業に対する政府開発援助(ODA)支援を中止すると発表した。今週末に開く先進7カ国首脳会議(G7サミット)を前に、G7諸国で唯一、内外で石炭火力発電事業継続の方針をとっている日本への圧力が強まることを事前にかわす狙いとみられる。
(写真は、建設が進むバングラデシュ・マタバリ石炭火力発電所フェーズ1事業)
報道によると、同省の小野日子(ひかりこ)外務報道官が同日の記者会見で明らかにした。バングラデシュのマタバリ石炭火力発電事業は日・バングラデシュの共同事業で、国際協力機構(JICA)がファイナンスを提供してきた。今回、両国政府間で事業継続の中止で合意したとしている。
マタバリ事業は、チッタゴン県マタバリ地区に、1200MW(600MWx2 基)の超々臨界圧石炭火力発電所(USC)及び関連施設(石炭輸入用港湾、送電線等)を設置し、電力供給を行う事業。JICAは フェーズ1事業への融資に続き、フェーズ2にも融資準備を進めてきた。フェーズ1事業は70%以上が完成しており、2024年1月に稼働する予定。

バングラデシュ政府は、フェーズ2でのUSC建設断念の代わりに、LNG火力発電所を建設する方針。同国の電力・エネルギー・鉱物資源担当相のNasrul Hamid氏は「われわれはすでにマタバリフェーズ2プロジェクトを廃止を決めた。代わりにLNGベースの火力発電所を建設する。マタバリのフェーズ1事業が完成後に、LNG火力建設に取り掛かりたい」と述べている。
ただ、米シンクタンクのエネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)は、バングラデシュの電力供給量がすでに過剰な状態にあり、(LNGを含む)化石燃料による発電所の新規建設は、同国の財政悪化や電力コストに深刻な影響を及ぼすリスクがあると警鐘を鳴らしている。
一方、インドネシア・西ジャワ州のインドラマユ石炭火力発電事業は、2000MW(1000MW ×2基)のUSCを建設し、ジャワ-バリ系統管内への電力供給を目的とした計画だ。1号機(1000MW)にJICAが円借款を検討してきた。しかし同事業には健康被害の悪化を懸念する周辺住民の反対が強く、日本政府にも再三にわたって事業停止の申し入れがされてきた。https://foejapan.org/aid/jbic02/indramayu/210325.html
今回の外務省の発表に対して、内外の環境NGOや両地域の住民団体等は歓迎を表明している。国内の環境NGO5団体は、「今回、遅い判断であったものの、ようやく日本政府が両事業への支援中止を決定したことは、弾圧や人権侵害を受ける可能性がある厳しい状況の中でも事業に対する懸念の声をあげてきた地域住民の一つの勝利であり、気候正義や人権保護を一貫して日本政府に求めてきた国内外の市民社会の成果」と評価するコメントを公表した。