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環境省主導で官民ファンド「脱炭素化支援機構(JICN)」設立。財投から102億円拠出。銀行等も同額拠出。「グリーンファイナンス推進機構」を衣替え。民間事業のリスクを補填へ(RIEF)

2022-10-30 18:06:03

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  環境省が主導する官民ファンド「株式会社脱炭素化支援機構(JICN)」が発足した。これまで同省が設立していた「グリーンファイナンス推進機構」を株式会社に改組し、国の財政投融資資金に加えて民間からの出資も受け入れて、脱炭素推進の民間リスクの補填と、資金供給を拡大することが狙いという。設立時出資金は官民それぞれ102億円の合計204億円。財投からは年度内に総額最大200億円を拠出する見込み。

 

 環境省主導による低炭素対応の公的ファイナンスの仕組みとしては、2013年発足の一般社団法人のグリーンファイナンス推進機構がある。同機構の出資は8年間で37件、184億円。エネルギー特別会計の資金を原資とするため、資金量に限りがあるほか、ガバナンス面の課題から、2018年度末時点で12億円の累積赤字を計上。その後、情報開示不足で赤字の増減は開示されていない。https://rief-jp.org/ct4/95583

 

 今回、立ち上げたJICNは推進機構の常務理事として経営を担ってきた田吉禎彦氏がそのまま代表取締役社長に就任する。関西電力経営企画室部長の上田嘉紀氏が専務執行役員に、環境省総務課長の永島徹也氏が常務執行役員となる。社外取締役に、JR東日本、電通、国際協力機構(JICA)、大阪公立大学(学識経験者)の各出身者を据える。

 

 事業対象は、脱炭素社会の実現に貢献する事業とし、民間事業が主導する事業の資金調達を補完する、としている。一般会計や他の財投資金等での補助金供給に代えて、ファンドからの出資で民間事業を支援するのが目的だ。

 

 主要な支援事業としては、企業の自社、および他社の温室効果ガス排出量の削減や吸収源の増大につながる事業、およびこれらの事業活動を支援する事業の3領域とする。具体的には、①発電・熱供給②住宅・家庭③農林水産・食品分野④移動・モビリティ⑤サプライ支援ーン⑥オフィスビル・商業施設等、の6分野を示している。

 

 個々の支援候補事業としては、再エネ発電・熱供給事業、石炭・ガス火力発電へのアンモニア等混焼事業、バイオマス燃料製造、住宅のZEH化、ソーラーシェアリング、再エネ組み合わせ型の電気自動車(EV)、脱炭素型船舶、カーボンニュートラルポート・同空港等を列挙している。

 

 エネルギー起源CO2以外の削減事業にも出資する。たとえば、プラスチックのケミカルリサイクル、セメント産業の設備更新投資、農畜産業のメタン排出削減事業、さらに森林整備を伴う林業再生、耕作放棄地での燃料栽培等も対象にする。

 

 設立時出資金は官民合計204億円だが、財投からは今年度中にさらに最大98億円の追加出資を見込んでいる。2023年度予算要求では財投出資額を最大400億円に引き上げ、さらにJICNが市場調達する場合の債券発行に際して政府保証額200億円(期間5年未満)を計上している。

 

 民間からの出資金は金融機関が3メガバンクや地銀等を中心に57機関、事業会社が電力・ガス、鉄鋼、化学、セメント、ガラス・土石等の高炭素集約型産業の企業を中心に25社となっている。

 

 各紙の報道では、西村明宏環境相は28日に開いた創立総会で「今後10年間で150兆円の脱炭素投資を実現するさきがけとなるべく、前例にとらわれず、積極果敢に資金を供給してほしい」と述べた。赤字、焦げ付き分はファンド(財投資金)がカバーするので、どんどん脱炭素事業に資金をばらまいてくれ、ということのようだ。

https://www.env.go.jp/policy/roadmapcontents/post_167.html

https://www.jicn.co.jp/assets/media/jicn2022.pdf