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大手電力各社による送配電子会社の情報不正アクセス問題で、内閣府の「再エネ規制総点検タスクフォース」が、現行法令の規制強化と、送配電事業の所有権分離を提案(RIEF)

2023-03-03 02:17:20

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 内閣府の「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」は2日、会合を開き、大手電力会社が送配電子会社を通じて新電力会社の情報に不正アクセスしていた問題を協議した。この中でタスクフォースの委員らは、今回の問題は、電力改革での発送電分離において、多くの先進国が送配電事業と資本関係を遮断する所有権分離をとったのに対して、日本では電力会社に配慮して送配電事業を子会社にとどめる法的分離方式としたことに原因があると指摘、速やかに所有権分離の実現を求める提言を提出した。

 

 (写真は、送配電子会社の情報不正アクセス発覚で謝罪する関西電力の森社長㊨)

 

 同タスクフォースは、経済産業省電力・ガス取引監視等委員会の前委員長の八田達夫・アジア成長研究所理事長ら4人で構成する。委員らは提言で、わが国での再エネ電源の導入の最大の障壁の1つが新電力各社が、大手電力の送配電網に接続する系統制約にあり、今回の問題は大手電力側が、自らの系統力を活用してライバルの新電力の顧客情報等を不正閲覧していた、と指摘。https://rief-jp.org/ct10/132933?ctid=72

 

 今回の情報漏洩・不正閲覧や電力カルテル問題などを通して、電力市場では公正な競争環境、 特に情報遮断を含む送配電事業の中立性が確保されていない、とした。こうした状況を改めるため、まず現行法令上の事業許可・登録の取り消しなど厳正な処分を求めるとともに、改めて公正な競争環境を整備するための行為規制の強化や所有権分離を含む電力会社の構造改革を求めた。

 

 委員らは今回の事案の悪質性に基づき、情報漏洩を行なった送配電子会社の許可と、不正閲覧を行った大手電力の小売り電気事業者登録をいずれもいったん取り消し、それぞれについて事業の承継先を即日に出す対応を求めた。こうすることで電力需要に影響を与えない形で、不正事業者の事業継続を断つ。電力各社は、個人情報保護法及び独占禁止法についても違反が濃厚であり、関係当局に対して、真相究明の上に厳正な処分を求めた。

 

 経産省による電力各社への聞き取りでは、大手電力各社は、小売部門(電力営業部門)の従業員等が送配電子会社の情報を使って新電力の顧客情報に不正アクセスしたことは認めたが、得た情報は営業目的には使っていないと説明している。しかし、タスクフォース委員らは、「(大手電力は)2016 年の小売全面自由化以前の顧客リストの電話番号等を用いて新電力の顧客に 対し、アウトバウンド営業(新電力の顧客に電話をかけて勧誘する等)を実施していた」と指摘し、不正営業の実施を認めた。

 

 こうした評価を元に、委員らは、現行の電気事業法上の規制が限定的で、違反行為に対する業務改善命令に従わない場合にのみ300 万円以下の過料を科すだけにとどめている規定を改め、罰則や処分範囲の拡大・強化を求めた。罰金額の増額のほか、罰則の対象を法人や代表者に拡大すること等を含む。

 

 行為規制の強化とともに、根底にある送配電事業の在り方を改め、現行の法的分離から、所有権分離への切り替えを求めている。今回の不正アクセスが10電力すべてで行われていたことは、2020年実施の発送電の法的分離が機能していなかったことを示す。この点で、委員たちは「大手電力の営業担当者は、送配電子会社は自分たちと同じ企業グループであり、そ の保有情報を見ることを問題だと思わず、覗き見ることに、違和感を覚えなかったのではないか」と指摘している。

 

 現行の子会社方式では、送配電事業の中立化が保たれていないことを示す。欧州のフランスやドイツでは、法的分離後の送配電子会社に対して、社名など親会社・グループ会社と混同の恐れのある商標やブランドの使用が禁止されている。送配電子会社の経営陣だけでなく全従業員についても、中立性の観点から兼業禁止のほか、経営陣には転職規制もある。

 

 ところが日本の大手電力では、社員を含めて、送配電子会社と親会社の間の異動・転勤は通常の人事異動の中で行われている。兼業規制や転職制限等もとられていない。委員らは早急に欧州並みの人的交流の遮断を求め、送配電子会社の全従業員を対象に、グループ内での兼業や転職先制限を求めている。

 

 こうした現行の枠組みでの行為規制の強化を進める一方で、こうした行為規制が十分に機能しないようならば、所有権分離をせずに敢えて法的分離を行った現行の発送電分離方式の前提が崩れるとし、所有権分離の改革の実施を求めている。現行の仕組みに基づいて、情報システムの物理分割や、行為規制を一層厳格にし、電力・ガス取引監視等委員会等による電力会社の行為を監視する等の総コストを考慮すると、「むしろ所有権分離を実現した方が社会的な総コストは小さいと考えられる」としている。

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/conference/energy/20230302/agenda.html

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/conference/energy/20230302/230302energy08.pdf