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関西電力。送配電子会社を通じた新電力会社の顧客情報への不正アクセス問題で、4月末まで「能動的」な営業自粛へ。不正アクセスの実行者は2人だったが、社内に依頼者がその6倍(RIEF)

2023-02-25 01:05:36

kanden001キャプチャ

 

 関西電力は24日、全国の大手電力会社で共通して発覚している傘下の送配電子会社を通じた、国の再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)システムへの不正アクセス問題で、同社での再発防止策を確立するための期間として、4月末まで電力販売等の「能動的」な営業活動を全面的に自粛すると発表した。顧客側からの申し出による「受動的」な営業は継続する。最も有効な再発防止策は、送配電子会社を完全別会社として法的分離することだが、その覚悟はないようだ。

 

 (写真は、記者会見で謝罪する関西電力の森社長㊨ 謝罪のお辞儀は、見事にそろっている=日本経済新聞より)

 

 一方で、社員に対する不正アクセス実施の有無を問うアンケート調査の結果として、送配電子会社からシステムアクセス用のID、パスワードを不正に手に入れて、実際にアクセスし、ライバルの新電力会社の顧客情報等を閲覧していた社員は同社の場合、2人だったと発表した。https://rief-jp.org/ct5/132757?ctid=72

 

 ただ、この2人は2020年2月から23年1月までほぼ3年にわたって継続的にアクセスを行っていた。その間、この2人にアクセスの依頼をした社員が13人、不正アクセスの事実を知っていた社員が22人いた。つまり、2人はいわば「実行担当」で、実際に情報閲覧に加担していた社員はもっと6倍強で、組織ぐるみだったといえる。こうしたアクセスが「問題だ」と思っていた社員は4人、「問題ない」と思っていた社員は18人(アクセスしていた2人を含む)と、社員の順法意識の低さが改めて確認された形だ。

 

 今回、関電が営業活動の「能動的自粛」を決めたのは、経済産業省から21日に法令順守を求める緊急指示を受けたため。営業活動の全面自粛は関電として初めて、としているが、同社は昨年には中部電力、中国電力、九州電力と談合し、企業向け電力供給でカルテルを結んでいたとして公正取引委員会から摘発を受けている。さらには2019年には同社役員らが福井県高浜町の元助役から、長年にわたって金品を受け取っていた問題が発覚している。https://rief-jp.org/ct10/130526

 

 こうした同社の相次ぐ不祥事は偶然なのだろうか。役員から社員に至るまで順法意識が「低い」ことが、同社の「負の社風」なのかもしれない。だとすれば、公益事業の経営主体として失格と言わざるを得ない。同社は、営業自粛の発表とともに、「緊急対策本部体制の強化」として事実調査や原因の特定、改善策等を進めるため、社長を本部長とする緊急対策本部を増強・事務局体制を強化するとした。そのうえで「今後、根底にある課題の抜本的な解決に向け、さらに踏み込んだ対応策を検討し、4月末までに一定の取りまとめを行う」という。

 

 「根底にある課題」は、送配電子会社と営業部門の併存である。その解決のためには、送配電子会社を完全に所有権分離に踏み切る決断を経営ができるかだ。報道によると、同日、記者会見した森望社長は「公正な競争を揺るがす大変不適切な事案を発生させたことを大変重く受け止めている。おわび申し上げる」と陳謝したというが、「課題解決」への決意を示したとは伝えられていない。

 

 「能動的営業自粛」については、電力やガスの販売、ソリューション提案などの営業や広告活動を4月末まで全面的に取りやめること、としている。ただ、引っ越しに伴う契約の切り替えなど、顧客側の申し出があった場合には「受動的」に対応し、電力供給には支障がないようにする、としている。むしろ、そうした場合は、顧客情報を「盗み見」した新電力会社への「お詫び」として、仲介の形で顧客を紹介して「罪滅ぼし」をしてはどうか。

https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2023/pdf/20230224_4j.pdf

https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2023/pdf/20230224_1j.pdf