HOME7.金融NPO |石炭火力発電へのアンモニア混焼を重視する政府と火力大手のJERAの行動は「消費者のコストと環境への悪影響の両面で逆行」とする分析。環境NGOのグリーンピースが指摘(RIEF) |

石炭火力発電へのアンモニア混焼を重視する政府と火力大手のJERAの行動は「消費者のコストと環境への悪影響の両面で逆行」とする分析。環境NGOのグリーンピースが指摘(RIEF)

2021-03-25 15:54:22

JERA002キャプチャ

 

 環境NGOグリーンピース・ジャパンは25日、「脱炭素」に資するとして、火力発電大手のJERAがアンモニア燃料を石炭火力発電に混焼させる計画について、「消費者のコストと環境への悪影響の両面において寄与しない」と指摘する分析ペーパーを公表した。アンモニア混焼は、石炭火力発電のコストを高め、電気代の高騰を招くほか、窒素酸化物(NOx)排出量を増やすなどの問題があると指摘。消費者のコストと環境への悪影響の両面に寄与しない選択だと批判している。

 

 公表したのはブリーフィングペーパー「石炭火力発電におけるアンモニア混焼ーー高価で有害なJERAと日本政府の選択」と題する内容。それによると、政府が昨年12月に発表した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」や、東京電力と中部電力が出資するJERAの計画では、今後、石炭火力発電でのアンモニア混焼拡大を目指している。

 

 しかし、アンモニアにはプラス面だけでなく、多くの課題を抱えている。たとえば、燃焼率の低さ、NOx排出量の多さ、放射強度の弱さなどを指摘している。アンモニア混焼の割合は、最近、ようやくカロリーベースで20%に達したばかりで、100%アンモニア燃焼の商業的利用は実証されていないという技術的課題は大きい。

 

 政策や規制の大幅な変更がない限り、2050年までに再エネ由来の「グリーン・アンモニア」が、化石燃料から製造されたアンモニアと価格面で競合するのは難しい。一方、CCS技術でCO2を回収した「ブルー・アンモニア」の場合、その製造に使用されるEOR(原油増進回収法)技術が化石燃料のさらなる使用を促進するため、カーボン・ニュートラルとは言えない、と注意喚起している。

 

 JERAの石炭火力発電の燃料費は、中位の燃料価格では、CCSなしの天然ガスから製造する「ブラウン・アンモニア」の場合は年間2.68兆㌦(約291兆円)増加し、CCSを使用した「ブルー・アンモニア」の場合は年間3.34兆㌦(約363兆円)増加し、正味の増加はそれぞれ1.207兆㌦(約131兆円)と1.561兆㌦(約169.7兆円)と見込まれるなど、膨大なコストアップにつながる。

 

あanmonia001キャプチャ

 

 既存の石炭火力との比較では、超々臨界圧(USC)の石炭火力発電の中位のLCOE(均等化発電原価)は73㌦/MWh。これに対して、「ブラウン・アンモニア」の場合は98㌦/MWh、「ブルー・アンモニア」では106㌦/MWhに増えると予測値を示している。一方で、直近の太陽光発電の入札価格は100㌦/MWhを下回る低価格になっており、今後更に下落が見込まれている。政府は2030-2035年に洋上風力の価格を62〜74㌦/MWhを目標にしており、アンモニア燃料の高価格がネックになる。

 

 100%石炭火力と価格競争をするためには、炭素税が、ブラウン・アンモニア混焼の場合で平均99㌦/tCO2、ブルー・アンモニアの場合で122㌦/tCO2という平均炭素税が必要になる。こうした高負担や技術的課題を踏まえ、同ペーパーは、「アンモニア混焼は、石炭火力発電所の延命のための技術に過ぎない」と結論付けている。

 

 さらに、現状のアンモニア混焼は実験的で、技術的にも初期の段階で、それに政策的な力を注ぐのは、「石炭火力を主とする企業やタービン製造会社の救済措置」と批判している。一方で、安価で脱炭素化した電力の未来は、風力や太陽光等の再エネによって築かれることが、すでに明確に実証されている点をあげて、政策の選択肢の誤りを強調している。


グリーンピース・ジャパンの気候変動・エネルギー担当、ダニエル・リード氏は「日本政府とJERAが計画するアンモニア混焼は、コスト面から化石燃料の使用量増加に繋がり、政府が掲げる2050年までの温室効果ガス実質排出ゼロには貢献しない。世界中で太陽光や風力のコストが急落する中で、日本の計画はかえって電気代の増大を招き、消費者にとっても適切な計画といえない。政府や電力会社は、石炭火力発電の延命ではなく、低価格化が進み、世界各地で実績のある自然エネルギー導入を進めていくべきだ」とコメントしている。

https://www.greenpeace.org/japan/sustainable/press-release/2021/03/25/50851/