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ネットゼロ保険同盟(NZIA)から離脱した日本の損保3社、NZIAで約束していた2050ネットゼロの中間目標設定を「パス」。環境NGOは「早急に目標設定」を求める(RIEF)

2023-08-02 00:47:04

350.0rgキャプチャ

 

 日本の大手損害保険会社3社が、5月に相次いで国連主導のネットゼロ保険同盟(NZIA)から離脱した後、NZIA加盟中に求められていた中期目標の公表を期限(7月末)が過ぎても、実施していないとして、環境NGOの350.org Japan等の6団体が3社に対し、早急に目標設定をするよう要請した。3社はNZIAからの離脱に際しても、2050年ネットゼロの実現に向けて取り組む立場は変えていない。そのため、当初約束していた中期目標設定を見送るとすると、NZIAを”攻撃”した米反ESGキャンペーンに屈したとの見方も出てくる。

 

 日本の損保3社は、他の欧州等の保険会社と同様、米共和党系州当局から「金融機関として集団で投融資先に対して脱炭素等の要請をすることは反トラスト法(独禁法)違反の恐れがある」との「圧力」を受けて、NZIAからの離脱に踏み切った。NZIAには欧州系を中心に30社の署名機関がいたが、この政治圧力によって現在は11社に減っている。https://rief-jp.org/ct2/135939?ctid=68 https://rief-jp.org/ct6/135920?ctid=68 https://rief-jp.org/ct6/135841?ctid=68

 

 当初、NZIAに参加した各保険会社は2050年までにネットゼロを実現するため、それぞれが抱える保険・再保険引受ポートフォリオを排出量ネットゼロ達成と整合する中期目標の設定を予定していた。NZIAが一月に設定した目標設定プロトコルのバージョン1.0(NZIA Target-Setting Protocol Version 1.0)により、2023年7月末日までに中間目標の設定と開示を定めている。残留している11社は同目標設定を進めているとみられる。

 

 NZIAから離脱した各社のうち、東京海上日動とMS&ADグループは、NZIAから離脱後もネットゼロの実現に向けて取り組みと言明する声明を出した(SOMPOホールディングスは出さず)。いずれも欧州系の主要保険会社の行動に合わせた形だった。欧州系保険ではフランスのアクサ等は、離脱後に、2030年をめどとした保険引き受けポートフォリオの中間目標を設定している。

 

 このためNGOらは「日本の損保も、気候変動対策に真摯に取り組むのであれば、NZIA脱退後も引き続きNZIAの目標設定プロトコルを踏襲して、早急に中期目標を設定するべき」と指摘し、3社の早急な対応を求めている。

 

 さらに、中核となる企業が脱退したことでNZIAが事実上崩壊状態にあることから、「NZIAに代わり、保険会社に移行計画の策促す国際的枠組みが必要。今後は世界の国・地域の保険監督当局で構成する保険監督者国際機構(International Association of Insurance Supervisors、IAIS)が移行計画策定の枠組みを促進することが期待される」と指摘している。

 

 IAISは今年11月に東京で金融庁が主催して年次総会を開催する予定であることから、「金融庁は、IAISにおいて保険会社の移行計画策定を促す枠組みが作られるよう、リーダーシップを持って取り組むべき」と求めている。ただ、金融庁に米共和党系の反ESGキャンペーンに対抗する「勇気」があるとは思えないがーー。

 

【共同声明】NZIA脱退した大手3損保は中期目標を期限内に公表せず~早急に保険引受ポートフォリオ排出量の中期目標の設定を!~ | 国際環境NGO 350 Japan

6caad3e0-bf63-48b5-a3c4-78c904b26fbb_axa_climate_and_biodiversity_report_2023_va.pdf (axa-contento-118412.eu)