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環境NGO3団体等、3メガバンクと中部電力の4社の株主総会へ気候対策強化を求める株主提案提出。各社の取締役の気候対策能力を問うとともに、株主向けの適切な情報開示求める(RIEF)

2024-04-16 01:48:01

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  国内外の環境NGOと個人株主は15日までに、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)等の3メガバンクと、東京電力と中部電力が出資するJERAの4社に対して、気候変動対策の強化を求める株主提案を提出したと発表した。4社に対する気候対策を求めるNGOの株主提案は昨年に続く。議案の内容は、各社の取締役会が、気候関連事業リスク及び機会の適切な監督を行う上で必要な能力あるいは人材を備えているかを問うとともに、株主が評価する上で必要な情報開示を求めている。

 

 株主提案を出したのは、環境NGOの豪マーケット・フォース、気候ネットワーク、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)の3団体。提案理由によると、「われわれは関連企業との対話を続けてきたが、より一層の気候変動対策への注力を期待し、今年は企業の取締役会に焦点を当てた提案を提出した」と説明している。https://rief-jp.org/ct7/134427?ctid=

 

 

3メガバンクと中部電力に対する各NGOの株主提案の概要
3メガバンクと中部電力に対する各NGOの株主提案の概要

 

 気候対策の強化を求める日本企業向けの株主提案は、昨年の株主総会シーズンでは過去最多の提案となった。提案者は環境NGOに限らず、国外の機関投資家や、いわゆるアクティビスト投資家、地方自治体等からも出された。こうした実態から、NGOらは「多くのステークホルダーがJERA等の高炭素排出企業による気候対策の遅れによる悪影響のほか、当該企業の企業価値自体の低下を招くとの危機意識を共有している」と強調している。

 

 昨年、NGOが提出した議案に対しては、環境関係の株主だけでなく、内外の機関投資家からも幅広い支持が示された。高炭素排出企業に投融資を続けるメガバンク3社に対しては、「(3メガの)気候変動への公約及び気候変動リスク管理戦略を踏まえ、これらの実効性を株主が判断できることが重要」と指摘している。

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 メガ向けの株主提案では、①化石燃料セクター企業の移行計画と『1.5℃目標』との整合性について、メガバンク各社がどのように評価を行うか②当該セクター企業がパリ協定に沿った信頼性の高い移行計画を作成しなかった場合、新規資金の制限を含む、対応措置をどのようにとるのかーー等についての方針の開示を求めるとしている。

 

 株主提案をした各NGOの担当者は次のように問題点を強調している。マーケット・フォースの日本・エネルギーファイナンスキャンペーン担当、渡辺瑛莉氏は「メガバンクの気候対策は『1.5℃』に気温上昇を抑えるために科学が明確に求めている行動水準からいまだに大きく乖離しており、自らの企業価値をリスクにさらしている。特に、石油・ガスへのファイナンス方針ではアジアの銀行を含む競合他社から大きく遅れをとって高リスクの事業に資金を提供し続けており、各社のリスク管理能力が問われている」とし、メガ各社の経営陣の気候対応能力に疑問を示している。

 

 RANの日本シニア・アドバイザーの川上豊幸氏は「メガバンクは、融資先の移行計画への評価体制が緩い。気候危機下で効果的な管理を行うための取締役など経営レベルでの専門性が不足しているように見える。結果として『1.5℃』目標の達成を困難にするような事業計画の企業にも融資を継続しており、銀行としての方針や管理体制が不十分なのではないかと懸念している」と、メガの経営能力に疑問を示している。

 

 気候ネットワークのプログラム・コーディネーターの鈴木康子氏は、日本最大のCO2排出企業JERAの親会社である中部電力に対して、「中部電力およびJERAは、引き続き、水素・アンモニア、CCSの導入促進や原発再稼働で脱炭素を図るとしているが、それらによる実質的な排出削減効果と経済性、さらに安全性の保障を考えると、まったく解決策になっていない。根本的な方針転換をするには、会社経営を担う人たちに科学的知見を踏まえた判断をしていただく必要がある」と、経営陣の交代を求めている。

 

 マーケット・フォースのエネルギーファイナンスアナリストの鈴木幸子氏も中部電力に対し、「採掘から使用を含めた供給網全体で化石燃料からの脱却なしに気温上昇を1.5℃以下に抑えることは極めて困難。中部電力とJERAの移行計画は、1.5℃目標のタイムラインに沿っているとは言えず、両社は大きな移行リスクを抱えるとともに、気候変動の悪化を招こうとしている。取締役会の気候リスク監督能力を株主が評価するための情報が不足している」と語っている。


メガバンク3社関連情報
https://shareholderaction.asia/ja/japanese-banks-mufg-smbc-mizuho-2024/

中部電力関連情報
https://shareholderaction.asia/ja/power-companies-chubu-jera-2024/

https://kikonet.org/content/34608