HOME8.温暖化・気候変動 |G7財務相・中央銀行総裁会議で、議長国のスナク英財務相、気候変動関連情報開示の導入を提唱。日本の麻生財務相は「最大排出国の中国」を念頭に「G7だけでの先行」に慎重姿勢(RIEF) |

G7財務相・中央銀行総裁会議で、議長国のスナク英財務相、気候変動関連情報開示の導入を提唱。日本の麻生財務相は「最大排出国の中国」を念頭に「G7だけでの先行」に慎重姿勢(RIEF)

2021-05-30 22:27:29

UKG7001キャプチャ

 

  主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁は28日、オンライン会議を開催した。議長国、英国のリシ・スナク(Rishi Sunak)財務相は、グローバルな金融市場が「ネットゼロ」への移行を促進するため、気候関連情報開示を改善し、国際的なサステナビリティ関連の金融情報基準の開発を支持することを提唱した。

 

 (写真は、オンライン会議に参加した各国の財務相、中央銀行総裁たち)

 

 英国は各国に先駆ける形で、今年初めからロンドン証券取引所上場の主要企業に対して、TCFDの提言を踏まえた気候情報開示の義務化を開始している。2025年までに英国の全企業に開示義務を拡大する方針だ。国際的にも、国際財務会計基準を提供するIFRS財団が国際サステナビリティ基準機構(ISSB)の設立準備を進めている。

 

オンラインで開いたG7財務相中央銀行総裁会議で話す議長国英国のスナク財務相
オンラインで開いたG7財務相中央銀行総裁会議で話す議長国英国のスナク財務相

 

 スナク財務相の今回のオンライン会議での提唱は、G7が気候情報開示の義務化を先導することを求めるもので、6月4-5日に、ロンドンで予定する対面方式での財務相会合で合意にこぎ着けたい考えとされる。スナク氏は新型コロナウイルス感染からの世界経済の回復に際して、グリーン&サステナブルな回復を進め、各国の経済・金融政策において気候変動への対応を優先するためにG7の協調を継続することも求めた。

 

 スナク氏が気候変動情報開示義務化の重要性を強調したのは、事業活動に伴って温室効果ガスを排出する各企業の排出削減、脱炭素化への転換を促すことが期待されるためだ。情報開示によって、企業が気候変動のリスクをどう制御・管理しているかを市場に示すことで、金融市場の投資家や金融機関が、金融取引、投融資の判断時に、投資先企業が開示する気候情報を考慮することで、企業の排出量の削減を促し、脱炭素化への取り組みを加速させる効果が期待される。

 

  会談後、スナク氏は「G7のカウンターパート諸国に、われわれが野心的な気候課題を促進する必要性を提唱した。来週の会議ではさらにグリーンで、グローバルな経済回復と雇用の確保を支援するための協調を継続できることを期待している」と語った。

 

 会議では世界経済情勢や中央銀行のデジタル通貨の扱い等に関する議論も行われた。各紙の報道では、米国のイエレン財務長官は、気候変動や環境問題への取り組みなど、地球規模の課題を多国間の連携を通じて解決することへの米国のコミットメントを強調した。中央銀行によるデジタル通貨政策やデジタル決済を巡る課題への取り組みにも支持を表明。「コロナ禍からの力強く長期的な回復を促進するために一段の財政支援が重要」と訴えた。

 

 一方、麻生太郎財務相は会議後、気候変動対策では「主要排出国を巻き込むことが不可欠との観点からG7として議論を継続していきたい」と述べた。麻生氏の発言は、温室効果ガス最大の排出国の中国を念頭に置いたものとみられる。G7だけでの先行情報開示に条件を付ける考えを示した形だ。

 先のG7気候・環境相会議でも日本の小泉進次郎環境相は、海外での石炭火力発電事業への公的支援停止方針に対して「各国の個別事情」を考慮する限定条件を求め、G7の協調の足並みの一致を先送りさせている。http://rief-jp.org/ct8/114409?ctid=71

  6月4-5日に開く次回会合では、英国は金融業界での気候変動対応の強化に加えて、多国籍企業に対する国際課税ルールの策定などでの進展を目指す、としている。

http://www.g7.utoronto.ca/finance/210528-finance.html