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「夏の到来」、日本含む東アジアの都市で加速化。もっとも「夏が早まった」のは、東京オリンピックのマラソン会場だった札幌市。20年前に比べ23.1日も早く到来。環境NGOが調査(RIEF)

2021-08-10 23:52:48

marathonキャプチャ

 

  世界中で、熱波や森林火災が広がっているが、東アジアでも夏の到来が20年前に比べて早まっていることが環境NGOの調査でわかった。対象となった57都市のうち8割以上で、夏が早く始まっており、もっとも早まっているのは、日本の札幌市。東京オリンピックのマラソンは「最も暑い都市」を選んで開催したことになる。気候変動の加速と、都市のヒートアイランド現象等が「夏を早めて」いるようだ。

 

 (写真は、東京オリンピックのマラソンが開かれた札幌市=東アジアで「もっとも夏の到来の早い都市」=を走る選手たち)

 

 調査は、環境NGOのグリーンピース・イースト・アジア(香港)が実施した。対象とした都市は、日本(21都市)、中国(28都市)、韓国(8都市)の計57都市。それぞれの都市の2001~2020年の20年間と、その前の20年間(1981~2000年)で、夏の到来(その年で気温が初めて30℃以上に達した日)を比較した。また、1960年代以降で「気温が非常に高くなった日」の日数を比較した。

 

 調査結果では、夏の到来は、57都市中、8割以上の48都市で早まっていた。このうち、日本の21都市については、気象庁が公表するデータを分析した。夏の到来は、2001~2020年の平均値を、その前の20年間の平均値と比べると、86%の18都市で早まっていた。

 

調査対象となった国と都市の数
調査対象となった国と都市の数

 

 もっとも顕著だったのが札幌市。2001~2020年は、その前の20年間と比べて夏の到来は23.1日も早まった。札幌市は日本でもっとも夏の到来が早まっただけでなく、今回調査した東アジア57都市の中でも、もっとも夏の到来が加速していることがわかった。東京オリンピックは、わざわざ、夏が加速する都市をマラソン会場に選んだことになる。札幌に次いで夏が早まっている日本国内の都市は、仙台市(19.1日)、北九州市(17.1日)の順。

 

 東京は、1981~2000年の夏の到来は、平均6月20日だったが、2001~2020年には6月9日へ10.9日早まった。夏の到来が遅くなっている都市もある。日本では、神戸市がマイナス2.7日、熊本市マイナス0.2日、静岡市マイナス0.1日の3都市だった。ただ、ほとんど横ばいといえる。

 

 中国では28都市中、夏の到来が早まったのは24都市。20年前と比べて最も早くなったのは湖南省の省都の長沙市の21.9日。調査対象都市全体では、札幌市に次いで2番目の早さだった。南寧はマイナス6.0日で、57都市中夏の到来が最も遅くなっていた。韓国は8都市中6都市で夏の到来が早まっている。もっとも早まっているのは、韓国南西部にある光州(クァンジュ)の12.7日だった。

 

 57都市中、夏の到来が早まった日数が多い10都市のうち、6都市が日本の都市で、日本の都市の「暑さ」が目立つ。気候変動の影響に加えて、ヒートアイランド現象が後押ししている可能性もある。

 

 1年のうち気温が非常に高くなった日数の調査では、1960年代からの気温の変化を調べた。調査対象の57都市の中で、1960年代と比べて気温上昇日数が倍以上に達する都市もあった。

 

 日本の21都市の場合、気温が33℃以上に達する日数が増えた都市は80%の17都市に上った。各都市とも1980年代以降に気温上昇日数が増えている。このうち東京では、気温が33℃を超えた日数は、1961年以降10年間で3日弱の増加ペース。年間平均は1960年代が13日だった。2011~2020年には平均26.9日と倍以上に増えている。

 

 他の都市では、さいたま市が、1980年代以降10年間で5.1日のペースで増加。札幌市は、1年のうちに気温が30℃以上になった日数は、1960年代は年間5.4日。2010~2020年では年間12.2日と倍以上増えている。

 

 中国では、北京、上海、広州/深圳などの都市で、35℃以上の日が3日以上続く「熱波」の頻度や激しさが増している。1990年代以降、特に加速している。北京の熱波の頻度は、2000年以降で年間平均1.45回で、それ以前の40年間の年間平均(0.54回)と比べ3倍近くに増えている。広州では、1961~2019年の間に熱波が合計98回発生。うち74%は1998年以降で、期間も長期化しているという。

 

 医学誌ランセットによると、世界の65歳以上の死者のうち、死因が高い気温の影響による人の割合は、2000年から2018年の間で約54%増加している。特に日本、中国東部の東アジア地域や、インド北部、中欧諸国で多いという。

 

 グリーンピース・イースト・アジアはこうした研究や今回の分析を受け、各国政府や企業が、気候変動に向けてより迅速かつ大胆な手を打つ必要があると訴えた。化石燃料業界への資金提供をやめ、風力や太陽エネルギーなどの再生可能エネルギーに出来るだけ早く完全に切り替えるよう求めている。

 

 <夏の到来が早まった東アジアの10都市ランキング>


札幌市 23.1日
長沙市(中国) 21.9日
仙台市 19.1日
北九州市 17.1日
青島市(中国) 16.2日
千葉市 15.1日
浜松市 14.4日
広島市 13.9日
重慶市(中国) 13.8日
無錫市(中国) 13.7日

https://www.greenpeace.org/static/planet4-eastasia-stateless/2021/08/c0800bce-eahightemperaturesbriefing.pdf