北極圏に位置するスウェーデンの最高峰、山頂の氷河の融解で、標高が1年で2mも低下。最高峰の座を降りる。温暖化の影響が顕著に反映(RIEF)
2021-08-18 18:22:44
温暖化の影響で北極圏の温度上昇が加速しているが、同圏に聳えるスウェーデンの最高峰とされてきたケブネカイセ(Kebnekaise)南峰の頂上を覆う氷河と氷塊が溶けて、昨年の1年間だけで約2m低くなり、最高峰の座を隣の北峰に譲ったことがわかった。南峰は1990年代から比べると約20mも縮んでいるという。
(写真は、ケブネカイセ南峰の山頂。頂上は雪と氷で覆われている)
調査はストックホルム大学が実施した。ケブネカイセはスウェーデンの最高峰であるとともに、ノルディック諸国でも最高峰として知られてきた。しかし、2019年に頂上を覆っている氷河の約3分の1が気温の上昇によって融解し、頂上の形も変形した。
同山の高さは夏と冬の間で、2~3mも異なる状態が続いてきた。今月14日の測定では、高さは2094.6 m。同山は1940年代から測定が続けられているが、過去最も低かった。昨年の8月の測定では、2096.5mだったので、1年間に約2m分が融解したことがわかった。
一方、北峰の頂上は岩に覆われており、氷河はなく、高さ2097mのまま。今後、冬にかけて、0.5mの「上昇」が予想されるが、北峰に追いつくことはできそうもない。したがって、最高峰の座は南峰から北峰に移ったと判定された。
同大学の氷河研究専門のPer HolmlundIt教授は「山の高さの変化は、スウェーデンで気候変動に対する氷河の反応を示す一例だ。ハイカーが山頂にたどり着くと、山頂の手前で平らな部分(プレ・ピーク)を通り過ぎる。しかし、この部分は2000年代初めにはなかった。山頂の氷が溶けて低くなった分、『プレピーク』に溜まって、そこが1~2m高くなっている」と指摘している。
ケブネカイセ南峰は1990年代半ばには、標高2118 mあった。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は今月9日発表した作業部会報告書(AR6:第6次評価報告書)で、人間活動による温暖化への影響は「unequivocally(疑う余地がない)」と断定したが、ケプネカイセ南峰の低下はその「疑い余地のない」事実の一つだ。