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1500以上の環境NGOや市民団体。11月の気候変動「COP26」の再延期を要請。コロナ対策の遅れで、気候危機が深刻な途上国からの参加者が限られ、議論の公平性失われる、と指摘(RIEF)

2021-09-11 01:19:00

COP25キャプチャ

 

  世界中の1500以上の環境NGOと市民団体が、11月に予定する国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)の再延期を求める声明を出した。新型コロナウイルス感染拡大対策のワクチンが途上国等では大きく遅れているほか、開催国英国の入国規制等で多くの途上国の代表やNGO、報道陣等が参加できない可能性が高いためとしている。気候変動激化の影響を大きく受ける途上国からの直接参加が限られる中では、公平な議論ができないと指摘している。COP26はすでに1年延期されており、開催国英国は再延期に否定的という。

 

 (写真は、2019年11月に、スペイン・マドリードで開いたCOP25)

 

 COP26は現在の予定では10月31日(日)~11月12日(金)の期間に、英国・グラスゴーで開催する予定。当初は、昨年秋の開催予定だったが、コロナ禍の影響で1年延期されている。今回のCOPは2015年のパリ協定の締結から5年後の見直し(当初の20年)で、国が決める貢献(NDCs)の改定が焦点となっており、これまでにない重要な会議と位置付けられている。

 

 しかし、コロナの影響は依然、続いている。世界全体での感染者数は2億人を超えている。G20メンバーの米国や英国、フランス、ドイツ、ブラジルなどはワクチンの3回目接種の方向で、日本でも検討中。これまでに世界中で接種された50億回分のワクチンの80%は高~上位中所得国で占めており、コロナ感染リスクの高い、低所得途上国にはワクチンがほとんど回っていない状況だ。

 

 こうした状況下で、世界保健機関(WHO)のテドロス事務総長も9日、先進国での3回目のワクチン接種を先延ばしして、途上国の人々にワクチンを回すよう異例の要請をした。COP26は世界190カ国以上から政府代表やNGO、市民団体、企業関係者らが集まる。2年前にスペインで開いたCOP25では2万7000人が参加した。

 

 このままでは、ワクチン接種が十分に行き渡らない途上国の参加者は英国の検疫の段階で足止めを受けるほか、先進国のNGO等の参加者も制限される可能性がある。政府間協議の「監視役」でもあるNGOや市民団体の参加が抑制されると、先進国主導の決定に導かれるとの懸念も出ている。

 

 こうしことから、気候対応を求める世界のNGOのネットワークであるClimate Action Network(CAN)は、「このままではCOP26は、安全で、包摂的な参加者を確保する対策を欠いており、延期を求める」とする声明を公表した。CANは英国政府と直接協議を進めてきたが、英政府が延期に消極的なことから、グローバルに声明を公表した。

 

 10月に中国で開催する予定だった国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)は、10月11~15日の開催は事務的な協議を中心とするオンライン会議とし、実質的な協議は来年の上半期に分けて開催する形に変更された。生物多様性のCOP15は当初、昨年10月の開催予定が、コロナ対策で今年5月に延期、その後10月に再延期されていたが、改めて、実質「再々延期」となっている。https://rief-jp.org/ct12/117082?ctid=65

 

 CANの代表のTasneem Essop氏は「現在のCOP26のスケジュールのままだと、気候変動の影響を受ける多くの国が、議論から実質的に取り残されることになってしまう」と懸念を表明している。ワクチン不足だけでなく、仮に英国に入国できた場合もホテル等での隔離期間に伴う追加費用の負担も途上国の参加者にとっては重荷になる。

 

 同氏は、「現状では世界の途上国の代表等が安全かつ公平に参加できる条件を確保できない。『ワクチン・アパルトヘイト』が起きている。こうした状況が改善されるまで延期すべきだ」と強調している。

 

 英国政府は、ワクチン接種を受けられない代表団等にワクチンを配布すると宣言し、アストラゼネカ製のワクチンの供給を提案している。だが、会議が実質的に始まる11月までに行き渡らせることができるかは不明だ。

https://climatenetwork.org/2021/09/07/can-cop26-postponement-statement/