HOME8.温暖化・気候変動 |国連気候変動枠組条約事務局、パリ協定の「NDCs」の最新提出状況を公表。143カ国が削減率強化。だが2030年の排出量は16%増(2010年比)。さらなる追加削減の必要性強調(RIEF) |

国連気候変動枠組条約事務局、パリ協定の「NDCs」の最新提出状況を公表。143カ国が削減率強化。だが2030年の排出量は16%増(2010年比)。さらなる追加削減の必要性強調(RIEF)

2021-10-26 16:48:03

UNFCCCキャプチャ

 

 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局は25日、パリ協定の「国別温暖化対策貢献(NDCs)」の提出状況を公表した。それによると、協定参加国のうち143カ国がNDCsでの削減率を強化したほか、71カ国は今世紀半ばのネットゼロを宣言した。ただ、これらの改定目標等を合算しても、2030年時点での温室効果ガス排出量は2010年比で16%増になり、パリ協定が目指す世界の気温上昇を「1.5℃未満」に抑えることはできない。

 

 UNFCCC事務局は、改定目標を踏まえた今世紀末の世界の気温上昇は、パリ協定の「1.5℃目標」「2.0℃目標」を超えて「2.7℃」になる可能性があると警告している。

 

 今回の推計は、同協定参加の192カ国のNDCsの最新の改定状況を10月12日時点でまとめた。9月にまとめた段階では、NDCsの改定あるいは新規目標の提出をしていたのは86カ国だった。今回は143カ国が116件の改定・新規目標をUNFCCCに提出した。https://rief-jp.org/ct8/119276?ctid=70

 

  これらのNDCs改定国合計の温室効果ガス排出削減率は、30年時点で9%減(10年比)となる。また今世紀半ばまでにネットゼロを掲げた71カ国が、公約通りにネットゼロを実現すると、50年時点での排出量は83~89%削減(2019年比)されることになる。ただ、改定しない国を含めると、30年には16%増(
10年比)となる。

 

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告によると、30年までにCO2排出量を1.5℃未満に抑制するには45%(10年比)の削減が2.0℃未満に抑えるには25%(同)削減が必要と指摘している。今回のUNFCCCのまとめでは、逆に30年の排出量は16%増なので、さらなる削減努力が必要になる。

 

 UNFCCCのパトリシア・エスピノサ事務局長は「NDCsの改定が明らかなことは、各国はパリ協定の目標を今年度末までに達成するには、自らの気候努力を倍増させねばならない。気温上昇の抑制目標を超過してしまうと、世界は不安定になり、終わりのない被害を被る。とりわけ、温室効果ガス排出にもっとも寄与の少ない人々が、もっとも大きな影響を被る」と指摘、気候正義の重視を強調した。

 

 同氏は、現時点でNDCsの強化・改定版を提出していない中国、インド等を念頭に、「新しい目標を出すよう求めたい」と呼びかけた。中国は30年までにCO2排出量をピークアウトし、2060年までにネットゼロを達成するとしているが、世界最大のCO2排出国なので、さらなる削減前倒しが求められている。

 

 COP26の議長を務める英国のアロク・シャルマ氏は「今回のNFCCCの報告で明らかなことは、各国は気候変動の悪影響から世界を守るためには、各国はもっと排出削減の『野心』を高め、かつ今それを実行しなければならない」と述べている。

https://unfccc.int/news/updated-ndc-synthesis-report-worrying-trends-confirmed