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日本取引所グループ(JPX)、経産省から自主的カーボンクレジットの市場取引の実証実験事業を受託。義務的排出規制(キャップ)無しの取引制度の可否が問われる(RIEF)

2022-05-18 00:11:09

JPX

 

 日本取引所グループ(JPX)は16日 、経済産業省から委託事業として「カーボンクレジット市場の実証事業」を受託したと発表した。経産省が想定している企業間の自主的カーボン取引を促進する「GX(グリーントランスフォーメーション)リーグ」の市場取引機能の実証化を目指すとしている。2021年度の補正予算による事業で、9月にも東京証券取引所に専用の市場を設けて実証実験を始めるという。

 

 事業は「令和3年度補正カーボンニュートラル・トップリ ーグ整備事業委託費(カーボン・クレジット市場の技術的実証等事業)」。経産省が立ち上げた「GXリーグ」の柱の一つである自主的な排出量取引市場づくりを実証する。

 

 現在、EUや中国等が進めている排出権取引制度は、企業に排出削減義務を課し、その超過達成、未達状況に応じて企業間の排出権クレジットの売買を認めて、全体の調整を進める仕組み。一方、経産省が目指すのは、企業の削減量は義務とはせず、企業自らが設定する目標に応じて定め、余剰が出た分を市場で売却できるようにするという。この場合、買い手は自主的な目標を未達となった企業となるが、企業の業績や景気動向によっては必ずしもクレジットを購入するとは限らない。

 

 JPXの実証実験では、こうしたクレジット売買のミスマッチをどう解消するかという点が最大のカギになるとみられる。またすでに自主的な取引がされているJクレジットや、海外でのJCM等のクレジット等もGXリーグでは売却クレジットとして供給される見通しであることから、なおさら、自主的な買い手の需要をどう確保するかが課題とされる。

 

 経団連は、先月公表した政策提言で、カーボンプライシング政策の導入を求め、環境省や財務省が目指す環境税よりも、排出権取引制度を推奨している。ただ、経団連、経産省が掲げる排出量取引制度は排出量の義務的割当(キャップ)を排した自主的取引なので、EU等の「キャップ&トレード」とは異質な、「キャップ無しトレード」ということになる。https://rief-jp.org/ct8/124633

 

 理論上はこうした「キャップ無しトレード」は十分に機能しないとされる。だが、委託事業を受託したJPXには、取引所経営の専門家として、何らかの秘策があるのかもしれない。経団連等では、買い手が十分に表れない場合は、国に買い上げてもらうことを想定しているともされる。そうなると、実態は企業への補助金給付と変わりがなくなる。

 

 JPXでは「本事業が、低炭素社会実現に向けた取引所ならではの貢献策との認識のもと、経済産業省と緊密に連携しつつ、JPXグループ全体の市場運営の知見を活かし、準備を進めていく」とコメントしている。

https://www.jpx.co.jp/corporate/news/news-releases/0060/20220516-01.html