HOME8.温暖化・気候変動 |COP28。観測史上、もっとも気温が上昇した「沸騰の2023年」の現実を踏まえても、「化石燃料の段階的廃止」に踏み切れず。「ゆでガエル状態」の地球と人類。COP方式の限界露呈(RIEF) |

COP28。観測史上、もっとも気温が上昇した「沸騰の2023年」の現実を踏まえても、「化石燃料の段階的廃止」に踏み切れず。「ゆでガエル状態」の地球と人類。COP方式の限界露呈(RIEF)

2023-12-12 17:39:10

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 アラブ首長国連邦(UAE)・ドバイでの国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)は、気候変動進展の元凶である化石燃料使用の廃止への決意を盛り込まない方向で、12日に幕を閉じようとしている。開催前はCOP28への期待が高まっていたが、結局は、いつものCOPと同様の「失望」を繰り返す中で、2023年は地球の気温上昇が観測史上、もっとも気温の高い歴史的な年になったことが確実だ。地球の温暖化の進展は、「期待」と「失望」を毎年、繰り返す「愚かしい人類」の騒動を見ぬふりするかのように、確実に上昇ピッチをあげている。今年は11月までの11カ月間で、産業革命時の「1850~1900年平均を1.46℃上回った。「沸騰の時代」へ転換したことは確かなようだ。

 

 EUの「Copernicus Climate Change Service (C3S) 」によると、今年の1月~11月の世界の平均気温は、過去最高だった2016年より0.13℃高く、観測史上「もっとも暑い年」の記録を更新するのは確実だ。月別でも、6月から11月まで6カ月連続で月別過去最高気温を継続中。11月の世界の陸上での平均気温は14.22℃で、1991~2020年平均気温より0.85℃高く、これまでの11月で最も高かった2020年の月別最高気温を0.32℃上回った。12月の気温も、冬の日本でも首をかしげるほど気温の高い日が多い。https://climate.copernicus.eu/record-warm-november-consolidates-2023-warmest-year

 

 C3Sの副局長の Samantha Burgess氏は「6月から6カ月連続で月別最高気温を継続しているほか、今年は夏と秋の両シーズンを通じて過去最高の気温のシーズンが続いたのも初めてだ。11月には、一日の平均気温が産業革命前以来、2℃以上に上昇するという『パリ目標超え』が実現している。人類の観測史上もっとも暑い年となることは間違いない」と指摘している。

 

昨年12月から今年11月までの1年間の世界各地の気温の変化(多くが薄赤色=気温上昇を示している)
昨年12月から今年11月までの1年間の世界各地の気温の変化(多くが薄赤色=気温上昇を示している)

 

 11月全体の平均気温は、産業革命前以来から、すでに1.75℃の上昇で、「1.5℃」目標を上回っている。さらに今年のこれまでの11カ月のうち、3分の1以上の日は、「1.5℃」目標を超えた。2015年にパリで開いたCOP21では、世界全体の温暖化対策の目標を「世界共通の長期目標として、世界の平均気温の上昇を、産業革命前から『2℃』以内とする目標に加え、『1.5℃』に抑える努力を追求する」ことで合意した。https://rief-jp.org/ct4/140398?ctid=70

 

 しかし、そのパリからわずか7年後の今年に、合意した目標の順守がほとんど効果をあげていないという現実が表面化している。C3S局長のBuontempo氏は「温室効果ガス(GHG)の排出量上昇が続く限り、われわれは今年体験したような結果と異なる状況に戻ることはない。気温が上昇し続けることで、熱波や干害の影響がさらに増大するということだ。ネットゼロをできるだけ早く実現することが、気候リスクを制御する最も効果的な道だ」と警告している。

 

 しかし、COP28の12日の最終日前日に、議長のジャベル氏が公表した成果文書案では、それまでの案に含まれていた「化石燃料の段階的廃止」という文言から「廃止」の言葉が消え、「削減」との表現に後退したという。化石燃料の使用廃止に反対する日本、米国をはじめとする化石燃料依存国の政治的圧力、議長国UAEを含めた産油国等の思惑、エネルギー企業の強力なロビイング等による「現状維持の圧力」が、「世界全体の歴史的な気温上昇」という「現実」を、あえて見なかったように無視し、会議の幕を閉じようとしているようだ。

 

 しかし、気温上昇の現実から目をそらしても、GHG排出量を抑制しない限り、気温は上昇し続け、気候変動の激化は加速する。地球は、化石燃料のエネルギー利権を固執する官民両分野の旧来勢力に、操縦桿を牛耳られ、「ゆでガエル状態」で立ち尽くすかの姿だ。化石燃料の使用を減少させれば、気温の上昇に歯止めがかかり、温暖化だけでなく、大気汚染も大幅に減じられることは、新型コロナウイルス感染期間中に、世界各地で大気の改善等がみられたことで、多くの人が実感したことでもある。

 

 つまり、化石燃料の段階的廃止を、やる気になって合意できれば、その効果は、明瞭に表れるということだ。しかし、コロナ禍が一段落すると、のど元過ぎた格好で、化石燃料への依存度をむしろ高めているのが、人類の愚かしさでもある。「ゆでガエル」の人類は、このまま「ゆで上がって」しまうのか、その前に、釜から自力ではい出せるのか。少なくとも、現在のような、各国が平等に自国の言い分を主張し合うCOP方式の限界を克服しないと、出口は見つからないだろう。

 

 気候変動の影響を最も受ける国々、地域・コミュニティ、住民等の「被害を受ける側」の意見をベースとし、「加害側」の国々や、産業界、人々の責任を、もっと明確にするべきではないか。そうした「加害・被害」の関係の明確化こそが、気候変動問題の基本ルールである「共通だが差異ある責任」の原理に沿うものだろう。人類が「ゆで上がる」前に、COP方式の改革の議論を深めることを期待する。

                           (藤井良広)

https://climate.copernicus.eu/record-warm-november-consolidates-2023-warmest-year