HOME |3月の世界の平均気温、前月に続いて観測史上過去最高を記録。産業革命前以来の気温上昇も「1.5℃超え」の「1.68℃」。1月以来3カ月連続で「1.5℃超え」(RIEF) |

3月の世界の平均気温、前月に続いて観測史上過去最高を記録。産業革命前以来の気温上昇も「1.5℃超え」の「1.68℃」。1月以来3カ月連続で「1.5℃超え」(RIEF)

2024-04-09 17:45:14

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上図は、3月の世界の陸上での平均気温の分布=C3Sデータから)

  地球は「1.5℃超え」の時代に、まっしぐらで向かっているようだ。EUの気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス(C3S)」の公表によると、先月3月の世界の平均気温は14.14℃で、2016年3月に記録した過去の同月の最高気温を0.10℃上回り、1991~2020年の月別平均気温も0.73℃上回った。産業革命前から気温と比較すると「1.68℃」高く、パリ協定が目標とする「1.5℃以内」を上回った。月別の「1.5℃超」は、今年に入って1月から3カ月連続となった。

 地球がパリ協定が目標とする「1.5℃」を突破したかどうかは、平均気温の水準が少なくとも10年単位で続くことを想定している。したがって、3月の平均気温だけで、判断できるものではないが、昨年1年間の気温上昇は「1.48℃」で「1.5℃」寸前まで上昇した。さらに、今年に入って、1月は「1.52℃」、2月「1.77℃」、そして3月「1.68℃」と、3カ月連続で「1.5℃超え」が続いている。昨年来、世界の平均気温の上昇は加速化していることは明瞭だ。https://rief-jp.org/ct8/143505?ctid=

 

  世界の平均気温が観測史上最高値を記録するのは、昨年6月以来続いており、この3月で10カ月連続となった。また過去12か月間(2023年4月~2024年3月)の世界平均気温は、1991~2020年の平均を0.70℃上回っている。https://rief-jp.org/ct4/141898?ctid=70

 

 地域別では、欧州で気温が最も高かったのは中央および東部地域。欧州全体の平均気温は、1991~2020年 の3月の平均気温を2.12℃上回り、観測史上2番目に暖かく、最も気温が高かった2014年の3月から0.02℃低いだけだった。欧州以外でも、北米東部、グリーンランド、ロシア東部、中米、南米の一部、アフリカの多くの地域、オーストラリア南部、南極大陸の一部で最も気温の高い3月だった。

 

 気温上昇の大きな要因としては、人類の経済活動による温室効果ガス(GHG)排出量の増大に加え、太平洋赤道域東部地域でのエルニーニョ現象が指摘される。C3Sの観測によると、今回のエルニーニョの影響はすでに発生海域周辺の海面水温が、3月中に1991~2020年の平均を下回るところも出るなど、影響は減少しつつある。その一方で、西太平洋熱帯域の海面水温は過去最高を記録した。また大西洋のかなりの部分と、インド洋西部、南アフリカ以南の南氷洋、太平洋の亜熱帯域での3月の海面水温が記録的な高水温となった。

 

3月の世界の海洋の温度の分布。大西洋の中心部と、太平洋西部等が赤く(高温)染まっている
3月の世界の海洋の温度の分布。大西洋の中心部と、太平洋西部赤道周辺等が赤く(高温)染まっている=C3Sデータから

 

 3月の北極の海氷面積は、月平均1490万k㎡で年間最大だった。面積は平年をわずか0.1万k㎡m(1%)下回っただけで、1980年代と1990年代に観測された値を大きく下回るものの、3月の過去の最低値を大きく上回り、2013年以来、3月としては最も広い海氷域面積を記録した。ただ、海氷密接度平年差は、1月、2月と同様、北極海の様々な海域で平年より高い値と低い値が混在する状況となっている。

 

 南極海周辺の海氷は、2月に観測史上3番目に少ない年間最小値を記録したが、その後、南極大陸付近で成長を再開。3月の平均海氷面積は350万k㎡で、1991年から2020年の3月の平均を90万k㎡(20%)下回る水準になった。これは46年間の衛星観測による3月のデータとしては6番目に少なく、2006年(-21%)と2019年(-22%)に近い水準。昨年は、2月に海氷面積が年最小値を記録した後、結氷期に非常に緩やかに増加し、5月から10月にかけて記録的な低水準で推移した。CS3は「現段階では、2024年の海氷面積がどのような推移をたどるかは不明」としている。

 

 各国の気象関係者は、1年以内に年間でも「1.5℃」目標を上回る可能性があると予測している。昨年来の急激な気温上昇は多くの科学者を驚かせ、温暖化の加速化がすでに始まっている可能性への懸念を高めている。

 

 各メディアによると、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の副議長の一人、Diana Ürge-Vorsatz(ダイアナ・ウルゲ=フォルサッツ)氏は、「過去15年間、地球は10年当たり0.3℃のペースで温暖化しており、これは1970年代からの10年当たり0.18℃の傾向のほぼ2倍」と指摘した。同氏は「これは気候変動の範囲内なのか、それとも温暖化加速のシグナルなのか?私の懸念は、このまま様子を見ていては手遅れになるかもしれないということ」とコメントしている。

 

 NASAゴダード宇宙研究所所長のGavin Schmidt(ギャビン・シュミット)氏は、「気温の記録は毎月0.2℃ずつ高まっている」と指摘。世界の平均気温上昇に関連する要因として、エルニーニョ現象のほか、公害規制により地球冷却効果のある二酸化硫黄粒子の減少、2022年1月にトンガで起きた火山噴火の影響、太陽活動の活発化などがあるが、同氏は「これらの要因は『毎月0.2℃上昇』の説明には十分でない」とする。そのうえで「8月までに気温上昇が安定しなければ、世界は未知の領域に入るだろう。温暖化した地球は、科学者の予想よりもずっと早く、気候システムを根本的に変化させているのかもしれない」と警告している。

                           (藤井良広)

https://climate.copernicus.eu/surface-air-temperature-march-2024

https://climate.copernicus.eu/sea-ice-cover-march-2024

https://www.theguardian.com/global/2024/apr/09/tenth-consecutive-monthly-heat-record-alarms-confounds-climate-scientists