HOME |2022年度の国内の温室効果ガス排出量。前年度比2.3%減で90年度比で最小。環境省発表。全体の4割を占める電力部門の排出量は90年度比2割増。政府の石炭火力等の温存策が影響(RIEF) |

2022年度の国内の温室効果ガス排出量。前年度比2.3%減で90年度比で最小。環境省発表。全体の4割を占める電力部門の排出量は90年度比2割増。政府の石炭火力等の温存策が影響(RIEF)

2024-04-12 22:13:41

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 環境省は12日、2022年度の温室効果ガス(GHG)排出量を発表した。排出量は前年度比2.5%減の11億3500万㌧で、1990年度の京都議定書の基準年設定以来、最低となった。工場などの産業部門でのCO2削減率が5.3%減、サービス部門4.2%減だった一方で、自動車等の運輸部門は3.9%増えた。政府が設定する削減目標の基準年(2013年度)に比べると、19.3%減となる。ただ、京都議定書の90年度比では11%減。日本の排出量全体の4割を占める電力等のエネルギー部門のCO2排出量は90年度比20.7%増と依然、増え続けている。政府の石炭・ガス火力発電温存策が化石燃料からの移行を遅らせていることが浮き上がる。

 

 2022年度のGHG排出量から森林等によるGHG吸収量(22年度5020万㌧)を差し引くと、同年度のネット排出量は10億8500万㌧。ただ吸収量は、前年度比6.4%減と減っており、経年的には森林管理の限界などから減少傾向となっている。

 

 メディアの報道によると、伊藤信太郎環境相は会見で、政府が掲げる2030年度の排出量削減目標とする「13年度比で46%減」の達成について「順調な減少傾向だ」と評価した。

 

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 同省は22年度のGHG排出量が前年度比減少した理由として、①発電電力量の減少及び鉄鋼業での生産量減少等によりエネルギ ー消費量の減少等②2013年度比での減少は、エネルギー消費量の減少(省エネの進展等)及び電力の低炭素化(再エネ拡大及び原発再稼働)に伴う電力由来CO2排出量の減少等③2004 年以来年々増加していたハイドロフルオロカーボン類(HFCs)の排出量が減少に転じた――などをあげている。

 

 ただ、90年度から32年間を通算してみると、削減率は11%減でしかなく、EU等に比べてかなり低いことについては触れていない。また、電力部門の排出量が増加している点についても詳細な分析は公表していない。

 

 22年度の主要排出源別でみると、CO2排出量が全体の40.5%と、最も多いエネルギー部門(電力等)は前年度比2.0%減、13年度比20.2%減。だが、90年度比では20.7%増と、主要排出源別では唯一増加している。2011年の東京電力福島第一原発事故後の原発稼働停止等と、その後の火力稼働増強の影響が大きいとみられる。政府は本来、当時の緊急対策としての火力活用から、迅速に再エネ転換を図るべきだったが、逆に火力発電延命の政策を撮り続けている。

 

排出セクター別の排出量の推移
排出セクター別の排出量の推移

 

 エネルギー部門に次いで排出割合の高い産業部門(24.4%)は前年度比6.0%減、13年度比23.5%減、90年度比も33.1%減。工場・事業所の点炭素化、脱炭素化はコスト削減にもつながることから、企業が積極的に取り組んだ成果が表れているといえる。

 

 運輸部門(17.8%)は前年度比4.0%増、90年度比8.4%減。22年度の同部門の排出量がプラスに転じたのは、コロナ禍克服での企業や個人の行動拡大で物流、旅客輸送増の影響が大きい。このうち鉄道や船舶、航空のCO2排出量は21年度比で約2割増となった。自動車の排出量も7.2%増えた。国内市場でのEV転換の遅れと、政府のガソリン車補助政策が続いていることが要因とされる。

 

 企業のオフィス等の業務部門からの排出量(5.5%)は、前年度比6.2%減、13年度比45.2%減、90年度比29.9%減。家庭部門(4.8%)は前年度比3.7%減、13年度比17.7%減、90年度比14.8%減。国民一人一人の取り組みは着実に成果をあげているようだ。主要排出源のうち、エネルギー部門以外はすべて中長期的にも減少しており、電力政策での日本のエネルギー政策の遅れが、経済社会全体でのCO2削減の成果の足を引っ張っている姿でもある。

 

 エネルギー部門の電源種別の発電量は、22年度全体で前年度比2.2%減の10106億kWh。このうち最も発電量が多かったのは天然ガス火力の3413億kWh(前年度比4.1%)、次いで石炭火力の3,110億kWh(同2.9%減)と火力主導の構造は変わっていない。石油火力を含めると化石燃料発電が全体の7割以上を占めている。

 

 発電量の第3位は、再エネ全体で2189億kWh(4.2%増)。原子力は5番目で561億kWh(20.8%減)と大きく落ち込んで、再エネのほぼ4分の1になった。再エネ電源を個別でみると、太陽光発電が最も多く7.6%増の926億kWh。次いで水力発電、バイオマス発電の順。バイオマス発電は前年度比12.0%増と伸びた。ただ、バイオマス発電は燃焼時にCO2を出すので、火力発電と同じではないかとの指摘もある。

https://www.env.go.jp/content/000215754.pdf

https://www.env.go.jp/content/000216325.pdf