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「2017年サステナブルファイナンス大賞」受賞企業インタビュー⑧地域金融賞の群馬銀行。「「地域の水資源を活用した再生可能エネルギー事業への支援」(RIEF)

2018-04-06 16:14:09

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 群馬銀行は2017年サステナブルファイナンス大賞で、地域金融賞を受賞しました。受賞理由は、名水として知られる群馬県の箱島湧水を利用した小水力発電事業に、PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)方式での開発を提案、約60年ぶりに同地での水力発電を実現させました。地域の資源を、金融の知恵で効率的に活用する環境金融の具体策といえます。同行執行役員コンサルティング営業部長の堀江明彦氏にお聞きしました。

 

――PFIで小水力発電をファイナンスするきっかけは何だったのですか。

 

 堀江氏:最初は地元の新聞で小水力発電の計画を知りました。群馬県の東吾妻町が、古い水力発電所を利用して小水力発電を始めるという記事でした。2014年1月だったと思います。そこからがスタートです。早速、町を訪問し、町が考えている事業内容をヒアリングしました。当初は複数の事業者に事業提案を求める一般的なプロポーザル方式での実施を予定されていたようです。

 

 そこにわれわれはPFI方式での取り組みを提案したのです。実は、その時点で、群馬銀行でもまだPFIの実績はありませんでしたが、PFIは社会的要請の高いものだとの認識で、取り組みに向け研究していました。東吾妻町のプロジェクトはまさにPFIにふさわしいと考えたのです。町に対してPFIのメリットをお話し、提案しました。

 

――町は一般入札での事業化を考えていたのですね。それを変えたと。

 

 堀江氏:今回の小水力発電事業は出力170kWで規模はそれほど大きくなく、事業形態も安定的な売電収入を中心としたシンプルなものだったので取り組みやすいと思いました。それと群馬県内ではまだPFIの実績がなかったので、ぜひとも第1号として取り組みたい思いもありました。ただ、われわれも初めてだったので、政府が設立した「民間資金等活用事業推進機構(通称、PFI機構)」の協力も得ながら、東吾妻町に提案していったというのが経緯ですね。

 

堀江部長(左)と西尾氏
堀江部長(左)と西尾氏

 

――町のほうも当初からPFIに関心が高かったのですか。

 

 西尾慶一氏(同行コンサルティング営業部副推進役):いいえ。当初、町はプロポーザル方式で検討されていました。こちら側から何回も足しげく通い、PFIのメリットをいろいろとお伝えして、ご理解をいただきました。最終的に町がPFIとして実施方針を公表するまでは1年近くかかりました。

 

――PFIだと、町にも事業からの収入が入るメリットがありますね

 

 堀江氏:そうです。定期的に事業収入が入ってきますので、町の財政的にも多少なりとも貢献するということで、それらを考慮していただいて町の方向が変わりました。PFIの場合、そうしたメリットの半面、手続きの煩雑さとか、事業者との契約書類作成等の複雑さなどが課題とされます。その点については、PFI機構の協力も得て、実施手続きやスキーム、契約書類についてできるだけ簡略化し、町や事業者に事務的な負担を極力かけないように工夫をし、ご理解をいただくことができました。

 

――事業者の選定は同時に進んだのですか

 

 堀江氏:地方公共団体の事業ですので、まずはPFIにするかどうかを町が決める必要があります。その次のステップとして、町が事業者を公募し、事業者に入札してもらうという流れになります。入札の応募は2グループありました。最終的に、群馬県に本社を置く上場企業のヤマトが選定されました。空調等の専門建設業者で、地元を代表する企業の一つです。小水力発電でも事業実績がありました。

 

――銀行としてのメリットは

 

 堀江氏:発電所は去年の6月から稼動し、順調に売電収入を得ています。当行は、PFIのストラクチャーを提案し、ヤマト社が設立した特別目的会社(SPC)に対して総額4億1000万円をPFI機構とでシンジケートローン方式で融資しました。事業は固定価格買取制度(FIT)の適用を受けます。事業者には売電収入が定期的に入り、その中から町に納付金を支払うという仕組みです。

 

箱島湧水の旧ダムの近くに新たに設けられた取水口
箱島湧水の旧ダムの近くに新たに設けられた取水口

 

 ――群馬県でPFI第1号の影響は他にも波及していますか。

 

 堀江氏:すでに県内第2号として館林市において学校給食センター事業が公募され、今年1月に当行がシンジケートローンを組成しました。地域の小中学校16校の給食をまとめて作る公的なセントラルキッチンです。館林市は、民間の資金とノウハウを活用することで、相対的に財政コストを抑えて公共施設を更新できた形になります。全国的にPFIを活用した給食センターを展開する事業者に対し、群馬県内でPFIを実施した当行がご支援させていただくことで、今年8月の供用開始に向け順調に準備が進んでいます。

 

 当行は、群馬県の各自治体で指定金融機関になっているところがずいぶんあります。そのため、PFI関連でもいろいろな情報が入ってきます。今すぐに3号、4号というのはないですが、年に1~2度は自治体や事業者向けにPFIのセミナーを開いて普及に努めています。PFI機構や関東財務局とも連携しています。そうしたセミナーには多くの自治体の関係者に集まっていただいており、具体的な先行事例が身近にあることで、検討を始める自治体も増えています。

 

――小水力以外での再生可能エネルギー関連の事業展開はどうですか。

 

 堀江氏:太陽光関連事業への融資は過去3年間で、実行額では約740億円。件数は1500件くらいあります。群馬県は全国でも日照条件が恵まれているところで、日照条件では全国で5本の指に入るといわれています。工場の上に補助金を使ってパネルを乗せたり、あるいは相続対策で作ったアパートの屋根の上とか、遊休地の活用なども盛んです。以前には、廃止されたゴルフ場の跡地の活用などもありました。

 

――太陽光発電はまだ増えそうですか。

 

 堀江氏:一度はピークアウトしたと言われましたが、国の方針もあるので再エネはまだまだ普及していくと思います。これからも再エネの発電所建設は続くのではないでしょうか。それぞれの地域に合った再エネが普及していくと思います。小水力発電については群馬県が、昨年夏ごろに県内の小水力発電の適地を13カ所選定して情報開示をしました。群馬県は山が多いので、その高低差を使って発電できるところが多いのです。

 

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 ただ、われわれも小水力事業の採算状況を研究しましたが、太陽光発電と違って、事業判断の前に立地候補地での土木面での事前調査が必要です。そうした「見えないところ」が一つのネックとされていますが、群馬県は県自身がそうした事前調査を行って、情報を公開するやり方をとっています。そのうえで、小水力発電の適地を公表しているので、事業者も取り組み易い環境にあります。われわれも小水力の事業者にコンタクトして、事業化の後押しとなるよう声かけをしています。ファイナンスをPFIでやるか、通常のコーポレートファイナンスでやるかは別問題です。

 

――森林資源を利用したバイオマス発電も群馬県では有望なように思えます。

 

 堀江氏:実は、当行主催で、「ぐんぎんビジネスサポート大賞」というビジネスコンテストを毎年やっています。今回は4月11日に表彰式を予定していますが、その上位にバイオマス案件がいくつかあります。発電だけでなく、肥料や飼料などの土壌改良事業もあります。

 

――地方創生が各地で話題になっています。銀行として地域創生につながる活動をどう位置付けておられますか。

 

 堀江氏:群馬県が環境事業に重点的に取り組む事業者を認定する群馬県環境GS(ぐんまスタンダード)認定制度があります。これは温室効果ガスを持続的に削減するPDCAを効果的に実践する環境マネジメントシステムを整備し、組織的に運用する企業を支援する制度です。われわれはこうした県の認定を受けた法人事業者に対して、環境配慮型私募債をご案内しています。2007年から実施しており累計で300億円以上の取扱いとなっています。

 

 また国の省エネ制度の補助金を事業者に紹介する「補助金デスク」も設けて、事業者の利便性を図っています。昨年は経済産業省の省エネ補助金で採択件数は16件、省エネ利子補給制度は4件の利用をいただきました。

 

サステナブルファイナンス大賞の地域金融賞を受賞した群馬銀行常務取締役の南繁芳氏
サステナブルファイナンス大賞の地域金融賞を受賞した群馬銀行常務取締役の南繁芳氏

 

 自然環境保護ファンドも群馬の特徴ですね。2006年から、「尾瀬紀行」という愛称の投資信託を、尾瀬が位置する群馬、福島、新潟の3県の銀行(群馬銀行、東邦銀行、第四銀行)が共同で提供しています。投信の取り扱い実績に応じて、信託報酬の一部を公益財団法人尾瀬保護財団などに寄付する仕組みです。これまで、群馬銀行の寄付分だけで累計1278万円になっています。

 

 地域の資源・遺産を活用した試みとしては、世界遺産の富岡製糸場の管理運営資金に寄付する「群馬の絹遺産」という投信もあります。こちらは2014年から群馬銀行が単独で取り組んでおり、これまでの寄付額は449万円。地域の資源・遺産の維持・管理を、地域の銀行が地域のおカネを集めて回すことで、地域の金融機関としての役割を果たせると思います。それが、結果として県民の信頼にもつながると思っています。

                                                    (聞き手は 藤井良広)