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ファンド、東北に続々 農林漁、6次産業化後押し(河北新報)

2013-05-02 16:05:37

rokujisangyo20130501028jd東北各地で、農林水産業の6次産業化を後押しするファンドの設立準備が進んでいる。官民出資の「農林漁業成長産業化支援機構」が1月に発足したのを機に、地方金融機関などが出資者に名乗りを上げ始めた。金融側は大胆な事業展開を期待するが、肝心の受け皿がどこまで広がるかは不透明な状況だ。現場には「対象は限定的」との冷めた見方もある。(報道部・大橋大介)rokujisangyo130502a101

現在、ファンド形成を検討している東北の金融グループは表の通り。青森、岩手、秋田、山形の4県をまたぐ二つの集団はメガバンクと協力し、20億円の資本規模で発足を目指す。
いずれも地銀は有望な出資先を地域で探り、大手銀が国内外の販売業者につなげる戦略を描く。荘内銀行は「資金提供に加え、販路まで面倒を見る」(広報室)と自信を示す。県境をまたぐ試みでは、じもとホールディングス(仙台市)傘下の仙台銀行ときらやか銀行もファンドを検討する。
福島では県と地銀、信金が4月30日、「オール福島」でファンドを設立した。農産品の付加価値を高め、東京電力福島第1原発事故による風評被害の克服を狙う。
都道府県が出資者になるのは全国で例がないといい、県農産物流通課は「県が入ることで出資先が偏らず、中立的な運用ができる」と強調する。
これに対し、七十七銀行は4月25日、「機動性を重視したい」として単独創設にこぎ着けた。東北初、全国でも2番目というスピードとともに、資金面でも他行の構想と遜色ない20億円規模を保った。
出資金は使途の制約が小さい上、資本を厚くすることで金融機関からの追加融資を受けやすくなる。事業者側のメリットは大きいが、「新会社が続々増える事態にはならない」(岩手県内の銀行関係者)との見方が大勢を占める。
ネックとなるのは、事業者に対する支援の仕組みだ。ファンドの出資金は、農林漁業者と連携企業の出資額と同額が上限となる。しかも、そのうち農林漁業者が半分以上を負担する必要がある。経営体力に劣る農業グループは、手を挙げることさえ難しい。
東北のファンド関係者の一人は「小さな加工場程度なら公的融資を受ければいい。われわれは既に体制が整ったところに億単位で出資したい」と明かす。支援先が極端に絞り込まれる事態になれば、新制度の恩恵を受けるのが一部の農業法人に限定されかねない。
東北の農業が市場競争に打ち勝つには、大規模化や合理化を裏打ちする資金面の支えが欠かせない。「地域全体を巻き込んだ大規模な事業を期待したい」(東北農政局)とする国の狙いが奏功するか否か。事業の将来性や発展性を見据えたファンド運営が鍵を握る。

[農林漁業成長産業化支援機構]6次産業化の強化を重要施策と位置付ける政府の方針を受け、国と民間の食品会社などが共同出資した株式会社。出資総額は318億円。地域ファンドに出資するほか、6次産業化に取り組む事業体に対して直接融資も行う。

 

http://www.kahoku.co.jp/news/2013/05/20130502t72013.htm