HOME |三井住友トラスト・アセットマネジメント。ESG課題への対応が不十分な企業への株主提案に賛成方針を明言。具体的な企業名は示さず。エンゲージメント路線一辺倒からの転換を強調(RIEF) |

三井住友トラスト・アセットマネジメント。ESG課題への対応が不十分な企業への株主提案に賛成方針を明言。具体的な企業名は示さず。エンゲージメント路線一辺倒からの転換を強調(RIEF)

2023-05-26 00:24:38

SMTAMキャプチャ

 三井住友トラスト・アセットマネジメント(SMTAM)はこのほど、投資先企業の株主総会において、ESG課題が不十分な企業の経営陣の提案に反対投票を実施する意向を示した。取締役会長のデービッド・セマイヤ(David Semaya)氏がロンドンでのセミナーで明らかにした。今株主総会シーズンでは、電源開発(Jパワー)、3メガバンク、トヨタ自動車、三菱商事等に対して、資産運用機関や環境NGO等から気候対策の明確化等を求める株主提案が提出されている。

 英メディアによると、セマイヤ氏は ロンドンのシティ・オブ・ロンドン・コーポレーションが開いた「Net Zero Delivery Summit」でのスピーチで、「私が(SMTAMに)就任した2018年以来、これまで6年間にわたって、ESG課題等を抱える約150の企業に集中する形で、エンゲージメント活動を続けてきた」とした。「しかし、今は株主としての投票権を活用する行動を加速化させるための準備をしている」と述べた。

 同氏は、対象となる投資先企業へのエンゲーメント活動の継続については「『ワンサイズ・フィット・オール(すべての投資先に同じ政策をとること)』の対応は、今や、『ワンサイズ・ベリーマッチ・ダズノット・フィットオール(One size very much does not fit all)』に転じた」と指摘。企業のESG取り組みの成果に応じて、エンゲージメント一辺倒ではなく、株主提案等への賛同等、投資家として多様な選択肢を活用する考えを強調した。

セマイヤ会長
セマイヤ会長

 このことは、エンゲージメントで成果が十分に上がらない企業に対しては、経営側よりも、ESG課題の改善強化を求める株主の提案を支持する側につくことを明確に示した形だ。ただ、投資引き揚げのダイベストメントについては消極的な姿勢を示した。

 日本の今株主総会では、ESG課題での株主提案が複数の企業に対して提案されている。同氏は、今回、どの企業の株主提案に対して賛成票を投じるかは明らかにしなかった。「一般的に言って、高排出企業」とだけ示唆したという。

 これまで気候変動やESG関連での株主提案のうち、2020年にみずほフィナンシャルグループに対して環境NGOの気候ネットワークがパリ協定の目標に沿う投融資計画の決定・開示を求める初の株主提案を行った際、投票結果が判明している投資家のうちで賛成票を投じた日本企業は野村アセットマネジメント、ニッセイアセットマネジメント、農林中金全共連アセットマネジメント、アセットマネジメントOneの4社とされている。https://rief-jp.org/ct1/106888?ctid=

 一方、セマイヤ氏が主導するSMTAMは、日興アセットマネジメント、大和証券などとともに反対票を投じたとされている。セマイヤ氏の指摘によれば「エンゲージメント重視」の期間だったことになる。2021年の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)に対する同様の株主提案に対しても、日本の賛成企業は、アセットマネジメントOne、野村アセットマネジメントなどの6機関だった。https://rief-jp.org/ct7/120235?ctid=

 セマイヤ氏はSMTAMの会長に就任する前は、ロンドンと東京の両方で日興アセットマネジメントの会長を務め、その前は、英バークレイズPLCのCEOや、アイルランドのIreland Wealth Management、バークレイズアセットマネジメントの会長等の要職を歴任している。

 同氏は、日本を含むアジアでの投資家の投資先企業に対するアプローチはエンゲージメントが主流で、これまでは特にガバナンス改革にフォーカスしてきたと指摘。しかし、環境・社会分野の課題がエンゲージメントに際しても急速に優先度を増していることを認めた。

https://www.smtam.jp/company/introduction/index.html