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東京ガス、九州大学、ジャパン・リニューアブル・エナジー。洋上風力発電で生じる「風車ウエイク現象」に対応して発電効率を高める風況予測ツール開発へ(RIEF)

2022-10-04 00:24:12

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 東京ガスは3日、九州大学、ジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)と連携し、洋上風力発電で生じる「風車ウエイク現象」を高精度に再現し、設備利用率向上と故障率低減を図ることに寄与するツールの開発に取り組むと発表した。「ウエイク現象」は洋上にウィンドファームを展開する際、複数の風車が相互に干渉し風向きの下流にある風車の発電効率が低下する現象をいう。開発するツールはこうした現象が生じやすい風況を事前に予測し、適切な運転制御を可能にするとしている。

 

 3者の共同事業は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)のA-STEP産学共同(本格型)に採択された。プロジェクト名は「洋上ウインドファームの採算性と耐久性の最適設計に資する日本型ウエイクモデルの開発と社会実装」。開発期間は2025年3月末まで。

 

 ウエイク現象が発生すると、ウィンドファームの風車群の下流に位置する風車は、風速の低下や風の乱れが大きくなる。欧州等の実証では10%程度の発電ロスを生む事例も生じる。大規模な洋上風力発電の発電量に最も影響する現象だ。

 

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 3者による風況予測ツールの開発では、風車ウエイク現象を含む風況を相対誤差率10%以内の高精度で予測可能なツールの開発を目指す。3者はこれまでの共同研究で、風車単体でのウエイク現象の解明を進めている。今回の研究では、2基以上の風車が連なってウエイクを生じる状況での現象解明に取り組む。開発するツールを活用することで、洋上ウィンドファーム1サイト当たり、20年間で数十億円~数百億円のプラス効果が見込めるとしている。https://rief-jp.org/ct10/113353

 

 開発ツールのコア技術は、九州大学内田孝紀准教授のチームが開発した「数値風況予測モデル・リアムコンパクト 」と「CFDポーラスディスク・ウエイクモデル」の純国産技術。前者は数値流体力学に基づくコンピュータシュミレーション技術で、風の流れを予測できる。後者は風車ウエイクの相互干渉現象を高精度で再現でき、ウィンドファーム全体での発電量予測や風車故障リスクを高精度に評価ができるという。

 

 東京ガスは、実機風車を対象としたウエイク計測とデータ分析やAIを使った風車ウエイクモデルの開発を担当する。JREは、実機風車の運転データの分析、ドローン等を使って実機でのウエイク現象の計測、現象の可視化等を担当する。

 

 洋上風力発電は、2030年以降の再エネ発電の主力になると期待されている。だが、北極圏から一定の風が流れ込む欧州の北海海域とは異なり、日本周辺の海域では、風況が複雑になることが多い。3者は開発する風況予測ツールの活用で、風力事業者が安定した発電量を確保できるようになることを目指すとしている。

 

https://www.tokyo-gas.co.jp/news/press/20221003-01.html

https://www.kyushu-u.ac.jp/f/49698/22_1003_01.pdf