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オーストラリアで発電した再エネ電力をシンガポールに海底ケーブルで長距離移送計画、主要出資者2人の富豪の「対立」で「自主的任意整理」に。再エネ技術革新の早さも影響か(RIEF)

2023-01-28 00:59:40

Sunpoer002キャプチャ

 

 オーストラリアの太陽光発電からの再エネ電力を、距離にして4200kmの海底ケーブルでシンガポールに供給する計画を進めてきたベンチャー企業が資金繰りで、行き詰まった。オーストラリア・シドニー裁判所に対し、自主的任意整理を申請した。同事業は同国の2人の富裕層に支持されてきたが、将来の事業の推進路線をめぐり、両者の間で意見対立が生じ、資金繰りが回れなくなったとみられている。新規の出資者が見つかるか、売却されるかの岐路に立っている。

 

 (写真は、サンケーブル社が敷設する予定の太陽光発電パネルを敷き詰めたところ(想像図)です)

 

事業主体のサンケーブル社はオーストラリアのベンチャー企業(シンガポール籍)。同国北部のノーザン・テリトリー州の町テナント・クリークの周辺に広がる1万5000haの砂漠地帯に、プレ組み立て式太陽光モデュール(Maverick)を工期25日という超短期間で設置する。蓄電設備も併設し、発電電力量は、当面は3GW、最終的に10GWに拡大する計画だ。https://rief-jp.org/ct8/91806

 

 発電した電力は一部、同州の州都ダーウィンにも供給する。だが、大半は、シンガポールに輸出する。シンガポールは国内の電力の95%を輸入天然ガスに頼っている。安定需要家だが、天然ガス需要の高まりによる恒常的な値上がり傾向の影響を受けていることから、化石燃料依存からの脱却を目指し、サンケーブル社の事業に期待をかけているという。

 

意見対立から「事業崩壊」の危機も
意見対立から「事業崩壊」の危機も

 

 同社では、両国間を隔てる「距離のカベ」も、太陽光発電電力を直流の海底ケーブル(送電容量2.5GW)を活用して移送することで経済的にも採算が取れるとしている。昨年3月には300億豪㌦(210億米㌦=約2兆7300億円)の資金調達も実施した。しかし、同事業への主要出資者であるMike Cannon-Brookes氏とAndrew “Twiggy” Forrest氏の間で、事業の将来の展開と資金面での意見対立が表面化、追加的な資金繰りが止まってしまった。

 

 二人のうち、Cannon-Brookes氏はサンケーブル社の会長も務めており、引き続き資金支援をすると明言しているが、Forrest氏の判断は明確にされていない。このため、同社ではオーストラリアでの企業再生のための破産手続きの一つである任意管理手続き(Voluntary administration)を裁判所に申請した。これは、自社が破産または破産状態にあると取締役会が判断した場合、任意管理人を任命し、会社の再生または清算に向けた手続きを一任する手法で、同国で経営破たん状態に陥った会社を処理・救済する方法として一般化している。

 

 その結果、現在は、グローバルアドバイザー会社のFTI Consulting社が管理人に指名されている。同社は調査の結果、サンケーブル社が抱える現在の現金不足は360万豪㌦弱だが、追加支払いが1000万豪㌦以上あると最高裁に説明した。資金繰り課題だ。任意管理人は裁判所から、次の債権者会議を5月31日までに開催すればいいとの指示を得ており、それまでに資金調達のメドをつける考えのようだ。

 

オーストラリアからシンガポールまで超長距離海底ケーブルで。
オーストラリアからシンガポールまで超長距離海底ケーブルで。

 

 同社の「夢物語」のような事業を支えてきた二人の富豪が対立した中身については「将来の資金繰りや展開」での意見対立としか報じられていない。別途、オーストラリアで開発した再エネ電力を海底ケーブルでオーストラリアに供給する「Asian Renewable Energy Hub(AREH)」の取り組みも、同国のマッコリ―グループ主導のコンソーシアムで同時に進められきたが、こちらは、コスト面の理由で、途中で再エネ電力の海底ケーブル移送を止めている。代わりに、再エネ電力で水素を製造し、それをアンモニアに転換させて船舶で運ぶ方式に切り替えている。https://rief-jp.org/blog/127066?ctid=33

 

 しかし、「AREH」が現在取り入れている再エネ事業も、その後、再エネ設備を展開するはずだった開発予定地区が、オーストラリア原住民アポリジニに属するニャングマルタの居住地の広大な自然原野で、ラムサール条約で保護されている地域を含むことから、豪環境省が計画推進に待ったをかけている。

 

 さらにアンモニア輸送自体も、CO2排出削減には貢献するとしても、アンモニア製造の過程で多様な有害物質や臭い等が発生する別の環境問題の浮上にもつながっている。再エネ関連の技術進歩に伴い、そうした技術間の競争が激化し、当初想定されていた技術がコスト高になったり、あるいは陳腐化が早まったりする傾向も顕著だ。

 

 サン・ケーブルの当初計画では、来年にも海底ケーブルの建設に着手するとともに、2027年には先行する形で、ダーウィンの町への電力供給を始める考えを示している。シンガポールへの電力供給の開始は2029年までとしている。

 https://www.abc.net.au/news/2023-01-11/sun-cable-enters-administration/101845100

https://www.energyvoice.com/renewables-energy-transition/478369/mega-australia-singapore-solar-cable-project-wins-lifeline-to-carry-on-building/?utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_campaign=Energy%20Voice%20-%20Daily%20Newsletter%202023-01-26&utm_term=Energy%20Voice%20-%20Newsletter