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フランス政府、国連のハイレベル専門家グループの報告を受け、金融商品を含む製品・サービスの広告から「グリーンウォッシング」を排除する広告規制を、年初から開始(RIEF)

2023-01-09 16:16:38

Franceキャプチャ

 

 フランス政府は新年から、金融商品や消費財等の製品・サービスに「カーボンニュートラル」「ネットゼロ」等を表示する際、国連の専門家グループがまとめた国際共通の「ネットゼロ・グリーンウォッシュ」を排除する勧告に基づく規制を導入した。勧告は「コア事業(石炭、石油・ガス等)を除外したネットゼロ誓約は『虚偽の誓約』」としており、石炭火力発電を継続しながら、再エネ事業を導入して「カーボンニュートラル」を目指すといった企業広告は、明確なグリーンウォッシュになる。フランス以外にも英国等も同規制の導入を目指している。

 

 フランス政府が1月1日から実施した広告規制の基盤となる国連専門家グループ報告は、グテレス事務総長が主導、カナダの元環境・気候担当相のキャサリン・マッケナ(Catherine McKenna)氏を議長に、17人の専門家で構成した。昨年11月にエジプトのシャルエルシェイクで開いたCOP27の席上、発表された報告は「企業や金融機関、都市、地方等によるネットゼロ確約は誠実さが重要(Integrity Matters)」と題している。https://rief-jp.org/ct8/129960

 

 新規の化石燃料開発の停止と、カーボンクレジットの過剰使用を停止させるために、超えてはならない「一線」を示すために5つの原則と、10の勧告を打ち出している。

 

 5つの原則は、①グローバルなネットゼロにつながる排出削減を実行する「野心」②「インテグリティ(誠実さ)」③適切で、非競合性で、比較可能を備えた徹底した「透明性」④科学ベースの計画と、第三者の説明責任による「信頼性」⑤「衡平性と公平性」の実証可能なコミットメント。10の勧告は、「ネットゼロ誓約の宣言」、「その誓約に基づく目標の設定」、「公正な移行」、「透明性と説明責任の増大」等を列挙した。

「グリーンウォッシング」防止のキャンペーン活動をする環境NGO(グリーンピースから)
「グリーンウォッシング」防止のキャンペーン活動をする環境NGO(グリーンピースから)

 報告を受け取ったグテレス氏は「多くの国の政府や企業等が『カーボンフリー』を誓約するのは良いニュース。だが、そのネットゼロコミットメントの基準には『厳格さ』のレベルが多様であるうえに、抜け穴が『ディーゼルトラック』が通れるほど広く空いている。われわれは『ネットゼロ・グリーンウォッシング』は断固として拒否する」と指摘した。

 フランス政府は、こうした国連の報告書を尊重し、自国の広告規制に盛り込んだ形だ。「規制の目的は、人々に対して透明な情報を提供するとともに、広告主となる企業が自ら設定したネットゼロ目標を実現するためのコミットメントを段階的に強化し、グリーンウォッシングと闘うことにある」と強調している。

 新ルールによると、企業が自社製品等について、「ネットゼロに資する」といった広告を打ち出す場合、当該企業は同製品の製造から、廃棄、リサイクル等の全ライフサイクルで発生するすべてのカーボン排出量・廃棄物の詳細な情報を開示する必要がある。また同製品からの温室効果ガス(GHG)の排出は、まず優先的に回避され、次いで、削減され、最終的にはオフセットされるべきとし、それらの取り組みの詳細を説明しなければならない。

 

 したがって、新規の石炭火力発電等へ投資する企業が、その排出量をカーボンクレジットやその他の削減方法でオフセットするような場合は、「ネットゼロ」を謳うことはできないことになる。さらにGHG排出量は絶対量の削減を求め、単位当たりの改善や、クレジットでの代替は否定される。

 

 製品のパッケージ等にカーボンニュートラル等を表示する広告やラベル等を記載する場合は、同広告と合わせて、自社の詳細な気候計画等を表示するウェブサイトへのリンク情報を(広告に)含めて開示しなければならない。

 

 ただ、環境NGOらはこうした広告規制自体に懐疑的なスタンスを示している。国際的な気候アクションネットワーク(CAN)のAnne Bringault 氏は「(今回の規制でも)企業はその広告活動で表示する環境声明によって消費者を誤解させる余地が大いに残っている。本来、政府がやるべきことは、疑念を呼ぶ製品・サービスの広告そのものを禁止することだ」と指摘している。

 

  企業の環境・気候広告がグリーンウォッシュを引き起こすと批判されるケースは、先にカタールで開いたサッカーのワールドカップでも起きた。ワールドカップ全体を「カーボンニュートラル」として協賛企業等が広告を繰り広げたことに対して、フランスのアクティビストは複数の欧州諸国を、広告規制当局に提訴する活動を展開している。

 

 広告規制当局が実際にグリーンウォッシングの疑いのある広告の禁止を言い渡した事例もある。英広告基準機関(BASA)は昨年、大手銀行HSBCがグリーン・イニシアティブを促進するとしてアピールした広告に対して、自行のGHG排出量削減に役立っていないとしたうえで、それらを広告したポスター等の使用を禁じる命令を出している。

 

 こうした「グリーンウォッシング」事例の発生に対して、英国の金融監督機関は、金融投資商品において、「グリーン」「サステナビリティ」「ESG」のラベルや用語の使用について厳格化する規制強化の提案をしている。